カニエ・ウェストによるオペラをLAで目撃! 荘厳な合唱とオーケストラ、そしてカニエのナレーションが織り成す前代未聞のショウを現地レポート

カニエ・ウェストによるオペラをLAで目撃! 荘厳な合唱とオーケストラ、そしてカニエのナレーションが織り成す前代未聞のショウを現地レポート - pic by MIHO SUZUKIpic by MIHO SUZUKI

突如その存在がチケットの発売と共に明らかになったカニエ・ウェスト創作のオペラ『ネブカドネザル(Nebuchadnezzar)』。カニエのSunday Surviceの聖歌隊が出演するというショウの会場は、毎夏のLAフィルハーモニー管弦楽団の公演でも知られるハリウッド・ボウルだ。チケットは20ドル~150ドルと良心的な値段設定ではあるが、全貌がつかめない旧約聖書の物語のオペラで、果たして1万7500人ほどの客席が埋まるのであろうか。

告知された開演時間の16時時点では、まだ入り口に長蛇の列ができており、結局始まったのは18時すぎ。その頃には会場もほぼ満席になっていた。アジア人も含めてマイノリティーの観客は2割ほどで、年齢層は20代から40代がメイン。子連れの客もいる。ブラッド・ピットも来ていたと報じられているが、マシン・ガン・ケリーの他、名前が思い出せない女優の姿を見かけた。

半円形の白壁のステージの上に巨大な円形の盤が掲げられており、全員同じ白の上下を着た聖歌隊が歌いながら列を成して登場。その後、会場の通路からも聖歌隊が歩いてきて、ステージに向かって行く。その数、およそ数百人。舞台中央に1人だけ青色の服の男がいて、叫んでいるが、彼こそがバビロニアの王、ネブカドネザルだ。カニエも何かを演じるのかと思いきや、ナレーション役だった。ステージ上にスクリーンがないため誰が誰なのか良く分からなかったが、途中で左手の舞台袖近くで両手を振りつつ全身でナレーションするカニエの姿を確認することはできた。

カニエの熱のこもった力強い声で『ダニエル書』の物語が読み上げられる中、聖歌隊が統率の取れた踊りを交えて歌い、ストーリーを表現していく。無宗教の人間にとってはストーリー展開が理解しづらかったが、音楽と舞台演出に限っていえば、荘厳な合唱と彼らの動き、その両脇に登場したオーケストラの演奏が豪華で、大いに見応えはあった。


フィナーレで再び聖歌隊が客席に現れ、一列になって煙が立ち込めるステージに向かい、カニエの「立ち上がって共に両手を挙げよ!」の声で一部の観客も含めて一斉に手を挙げた光景は、非常に神々しく宗教的であった。

しかし、中村明美さんの「ニューヨーク通信」でも指摘されていた通り、オペラの要素は最後まで見受けられなかった。
なぜ彼は、これをオペラと呼んだのだろうか?

とはいえ、従来のオペラではない新オペラを、自らが生んだ日曜礼拝の聖歌隊を起用し、創世主の如く2019年末に生み出したカニエ・ウェストの想像力と才能と権力は、崇めるに値すると言えるだろう。(鈴木美穂)
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