148曲入り、8枚組のボックス・セット。その内訳はこうだ。エルトン・ジョン自ら選曲を監修した『ディープ・カッツ』が2枚。デビュー前の時期を含むデモやセッション音源をまとめた『レアリティーズ1965-1971』が3枚。アルバム未収録曲とシングルB面曲をまとめた『Bサイズ1976-2005』が2枚。そして、昨年発表された(日本語版は今年)初の公式自伝本『Me:エルトン・ジョン自伝』の中で言及されている楽曲をまとめた『アンド・ディス・イズ・ミー…』。これほどのボリュームだと、聴きどころも山盛りである。
エルトン・ジョンが本作に対し「初期の頃のバーニーと僕が、理解し難いくらい、とてつもなく多作だったことが分かる。曲は黙っていても僕らの中から次から次へと溢れ出てきたし、スタジオに入ればバンドが信じられないほど凄い演奏をしてくれた」と語る通り、レアリティーズにおける曲想の豊かさと火を噴くような演奏は驚異的だし、本人お気に入り集である『ディープ・カッツ』に彼が敬愛したレオン・ラッセルとの楽曲を3曲、リトル・リチャードとの楽曲を1曲入れているのも微笑ましく、楽しい(もちろん、曲自体が滅茶苦茶に良いのだけれど)。ファン・アイテムとして最高の逸品なのは間違いないが、デモ含めどの曲も高いクオリティが保たれていること、エルトン・ジョンという才能の巨大さが多角的に分かりやすくパッケージングされていることを考慮すると、映画『ロケットマン』などでエルトン・ジョンを知り、これから彼の作品を聴き始めようという人にも、おすすめできる内容と言える。まずは2017年発表の決定版的ベスト・アルバム『ダイアモンズ~グレイテスト・ヒッツ』を聴いた上、それに加える宝石箱として本作を手にするのはいかがだろうか。(長瀬昇)
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ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』12月号に掲載中です。
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