ロックの光沢と透度

キングス・オブ・レオン『ホウェン・ユー・シー・ユアセルフ』
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ALBUM
キングス・オブ・レオン ホウェン・ユー・シー・ユアセルフ

サザン・ロックの熱量の中から透徹した輝度と硬度を備えたモダン・ロックを削り出す、とでも言うべき独自の道程を歩んできたキングス・オブ・レオン。2016年の前作『ウォールズ』が初の全米&全英1位を記録したという事実は、そんなKOL自身の変革の方向性を力強く後押しするものだったのだろう。それこそ「南部のストロークス」というかつての形容をも遥か置き去りにするような、研ぎ澄まされた異次元ポップ感に貫かれた今作の音像は、それほどまでに大きな確信に裏打ちされたものである、ということだ。

前作『ウォールズ』から引き続きマーカス・ドラヴス(コールドプレイアーケイド・ファイアなど)をプロデューサーに迎えて制作された今作。幾度も繰り返される《あの強盗を捕まえろ》のフレーズとタイトなロックの加速感をクールな覚醒感へと昇華した“ザ・バンディット”。ケイレブの歌と抑えたアンサンブルが純白の闇の如きメランコリアの風景を描き上げる“100,000ピープル”。かねてより内包していたU2的な音の志向性をさらにブラッシュアップ&再構築した“ゴールデン・レストレス・エイジ”の、力強くもジェントルな包容力。ガレージ感あふれるバンド・サウンドの躍動感が、聴く者の苦悩も葛藤も漂白するかのように決然と響く“エコーイング”……ロックというフォーマットを徹底的に磨き上げることで、4人はまったく新しいフォルムのKOLの表現を確立するに至った。今作はそういうアルバムだ。

「君が自分自身を見る時」――今作に冠されたタイトルが示唆するのは他でもない、今この時代を生きる我々の内なる孤独を、ロックの雄大な視界とシームレスに直結する、という意思と探究心の発露そのものなのだろう。明快な進化作。(高橋智樹)



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ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』4月号に掲載中です。
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キングス・オブ・レオン ホウェン・ユー・シー・ユアセルフ - 『rockin'on』2021年4月号『rockin'on』2021年4月号
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