「僕」と「僕たち」を繋ぐ哀しみ

Lanndo『ULTRAPANIC』
発売中
ALBUM
Lanndo ULTRAPANIC
存在そのものが「個」であると同時に「場」になる人がいる。ボカロP「ぬゆり」はまさにそんな人なのだと、ここに届いた彼のソロプロジェクト「Lanndo」の1stフルアルバムを聴いて感じる。Eve、suis(ヨルシカ)、ACAね(ずっと真夜中でいいのに。)、Reol須田景凪キタニタツヤびす、七滝今といったシンガーたちの多彩な声色がアルバム全体を彩っているが、同時に本作は、ぬゆり個人の「叫び」が作品を通して溢れ出し、一貫したトーンを与えている。《(どうして進めないの)/分からないままで僕たちは暮らすだけだ》(“青く青く光る”)――ぬゆりは、自らの迷いも痛みも無力感も、音楽の中で隠していない。その痛みは「僕」という主語のものであり、「僕たち」という時代のものにもなりえる。

最後を飾る“ロウワー”は、ぬゆり名義曲のセルフカバーで、本作で唯一、ぬゆり自身が歌唱を担っている。《僕らが離れるなら 僕らが迷うなら/その度に何回も繋がれる様に》――この哀しさ、この希望。人選もさることながら、その詩情においても、「今」を突き刺すサウンドトラックと言えるだろう。(天野史彬)

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