圧倒的な「負け」からの始まり

ザ・エックス・エックス『エックス・エックス』
2009年12月09日発売
ALBUM
ザ・エックス・エックス エックス・エックス
不思議なバンドである。ビートは効いているが踊り出す気配はなし、呟くような男女ボーカルが重なり合って、メランコリックでひんやりとした空気を醸成していく。ROCKIN'ON 2009年12月号「UP&COMING」の写真を見てもらえれば分かるが、どうして左のふたりと右のふたりが一緒にバンドやっているのだろう。かたやオルタナ・フリーク、かたやゴス・キッズ。学校で知り合ったらしいが、もしかしたら互いに友達が少なかったのではないか。対照的なアウトフィットのはみ出し者同士が近づいて、こんな奇妙で美しいバンドが生まれた。

そんなことを考えてしまうのは、彼らが「明日がすぐに来てしまうのはいや」「幻想が欲しい」(“ファンタジー”)と逃避を望みながら、一方で「あなたが信じるなら、パラダイスに連れて行ける」と逆ギレし(“クリスタライズド”)、あげくに辿り着いた場所で橋に火を放ち「ずっと探していたものがここにあった/あなたは私のもの」(“アイランズ”)と歌うようなバンドだからだ。絶対的な欠落とそれを補うべく暴走する想像力、結果的に閉じていく自己。伏字のようなバンド名は、生来いびつな彼らの本質を言い当てている。(小川智宏)
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