スピッツの瑞々しさがずっと変わらないのは、彼らが変わり続けているからである。それは、バンドが初期衝動のまま延々と走り続けるのとも、世間に求められる役割をパーフェクトに演じ抜くのとも、全く違う。スピッツがスピッツでいるための新鮮な驚きを、彼ら4人は常に自分で作り出してきたのだ。そして、それをデビューから20年を迎える今なお、ごく当たり前のように続けているところに、彼らのバンドとしての奇跡はある。この『とげまる』はそんなスピッツが、いよいよ「成熟」というテーマに正面から向きあってみせたアルバムである。ただし、それは年齢やキャリアがどうとか、そういう気分から出てきたものではない。行き詰まりだらけの2010年のリアルの中で、誰もが諦めることを求められて、「それが大人でしょ?」みたいな空気に、スピッツは正面から立ち向かっているのだ。だから、歌詞は直接的でエモーショナルだし、サウンドも一貫して力強くてポップ。そんなロックバンドとしての確信をもう一度掴んで、スピッツはさらに先へと進もうとしている。“オケラ”以来のセルフプロデュース2曲も、とてもいい。(松村耕太朗)