早く同時発売のカバー盤も聴きたいぞ!

フー・ファイターズ『ウェイスティング・ライト』
2011年04月20日発売
ALUBM
フー・ファイターズ ウェイスティング・ライト
アナログ機材を使い自宅ガレージで行ったレコーディングというのが最大のポイントだが、その理由と成果が一曲目から納得いく。音が前面にバチッと出てきて空気が鳴っているのがわかるのだ。ヘッドフォーン視聴がデフォルトとなったような状況の中で、俺の求める音はそこに収まるものじゃないんだというデイヴの強烈な主張が思いっきり炸裂する。そのアナログの感触、骨太な音の質感を作り上げる相棒としてブッチ・ヴィグが初めて指名された。

前作でもビートルズ+ツェッペリン的なソングライティングが冴えてたが今作はさらに磨きがかかり、どの曲も隙がない。ガレージ・パンクが炸裂したり限界の際まで突き進む曲もあるが、正確なハンドリングによってみごとなサウンドの軌跡を描いていく。突進力が詰まった“ブリッジ・バーニング”“ロープ”の導入部から、ひねった隠し味も光るグランジ・ナンバー“ホワイト・リモ”やお得意のアクースティック・ギターをフィーチャーした“ジーズ・デイズ”や、美曲を素直に仕上げた“アイ・シュッド・ハヴ・ノウン”等、どれもいい。そして〈絶対に死にたくないんだ〉の絶叫がこだまする最後のナンバー“ウォーク”で改めてこの新作がニルヴァーナという大きな枷に剣を突き立てる意味もあったことを確認させる。

その説得力の源は曲そのものの良さであり、それを最大限に引き出すスキルをデイヴが完全に身につけているのが素晴らしい。『ネヴァーマインド』から20年後にふさわしい傑作だ。サンキュー、デイヴ。(大鷹俊一)
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