【来日レポ】ジェット @ 新木場Studio Coast公演

【来日レポ】ジェット @ 新木場Studio Coast公演 - Photo by Rie Fujiwara (写真は3月8日・大阪公演のもの)Photo by Rie Fujiwara (写真は3月8日・大阪公演のもの)

ブルース・スプリングスティーンの2017年豪州ツアーでサポート・アクトを依頼されたことを契機に、解散から約5年で復活を遂げたジェット。結果的にはサポート・アクトに先行して復活ライブを行い、昨夏にはフジロック来日も果たした。そして2018年、丸8年ぶりとなる日本でのヘッドライナー・ツアーを開催。名古屋・ダイアモンドホール(3/6)、東京・新木場スタジオコースト(3/7)、大阪・なんばHatch(3/8)というスケジュールで、この3会場は前回のジャパン・ツアーが行われた会場と同じである。本稿では、スタジオコースト公演の模様をレポートしたい。

まず、開演時間きっかりにオンステージしたのは、来日公演の全公演でサポートを務める国内バンドのドミコ。今年はSXSW出演やUSツアーも予定している、さかしたひかる(Vo・G)と長谷川啓太(Dr)の2ピース・バンドだ。長谷川のつんのめったパワフルなビートに導かれ、さかしたのルーパーを駆使したソリッドなギターワークと歌が転がり出す。その地肩の強いパフォーマンスでオーディエンスの好反応を誘い、次第にドミコらしいストレンジなロック世界へと引きずり込んでいった。熱いセッションから傾れ込む“まどろまない”はとりわけ素晴らしく、約30分と短い持ち時間でありながら確かなインパクトを残していった。

そして真打、ジェットが歓声を浴びて登場。ニック・セスター(Vo・G)とクリス・セスター(Vo・Dr)の兄弟に、キャメロン・マンシー(G)とマーク・ウィルソン(B)というデビュー以来のラインナップ。そこにサポートのキーボード奏者が加わった5人編成で、まずはクリスが「トーキオー!!」と威勢良く挨拶を投げかけ“Get What You Need”を歌い出す。コンビネーションの立ち上がりは悠々としているが、ボーカルがニックにスイッチするや否やその強烈なパンチに場内の熱がぐっと上昇していった。バンド演奏を煽り立てるオーディエンスのハンドクラップ、それに呼応するニックのブギーなギターと、ライブの相乗効果も序盤から上々だ。

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バンド一体型のリフで転がす“She's a Genius”の後、ニックが「こんばんは、みんなようこそ!」と歓迎の挨拶を挟み、湧き上がるジェット・コールに合わせるようにクリスがまたビートを刻み始める。彼が率先して乾杯の音頭を取ると、フロアからは「俺もう脱いじゃってるよ!」と楽しげな声が上がり、ステージからは「おい、女の子たち、見てやれよ」とやり返すなど、距離感の近いコミュニケーションの時間が育まれる。情緒的なハミングのメロディで胸を掴む“Lazy Gun”のあと、ニックは「なんか静かだな」と呟いていたけれど、こっちは余韻に浸っているんだよ。

強烈なサウンドとフラッシュライトがシンクロする“Black Hearts (On Fire)”の後には、オーセンティックなロックンロールでありながらもサービス精神旺盛なフックをそれぞれに手掛ける、ニックとクリスの作曲術が光る時間帯に。オーディエンスの合唱を導く“Seventeen”〜“Walk”〜“Look What You've Done”という、キャリアを見渡したグッドメロディの連打が素晴らしかった。ロックンロールは、勝ったり負けたり、立ち止まったり再び歩き出したりしながら、しなやかに経験を重ねていくのだということ。ジェットというバンドの懐の深い魅力は、必ずしも性急さや爆発力だけではなく、メロディの中にこそあると言っていい。“Come Around Again”では、キャムも熱唱でメロディを共有していった。

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フロアの様子を写真に収めたニックは、タンバリンを手にとりシャラっと軽く振ってみせる。それだけで、オーディエンスは狂ったような歓声を上げる。最高のロックンロールの「予感」だけで沸騰してしまうのだ。マークのモータウンなベースラインにクリスのビートが重なり、キャムが「で、こうだろ」と一瞬のタメを効かせながらギター・フレーズを弾けさせる“Are You Gonna Be My Girl”。ここぞとばかりに熱くタイトに決めるパフォーマンスは、なんとも心憎い。ニックが真に満足げな笑顔を見せて再会を噛み締める言葉を投げかけ、完全燃焼の“Rip It Up”まで終盤を一気に駆け抜けてゆくのだった。

ニックがアコギを携えて一人きりで再登場したアンコールは、もしかすると昨年のソロ・デビュー作から楽曲が披露されるのかと思いきや“Shine On”である。そのままギターを奏で続けるニックに、クリスが手にした煙草を一服吸わせて(絵になる兄弟だ)、ニックに負けず劣らずのシャウティング・ボーカルを放つ“Move On”へ。なびくオルガンの音色、そしてマークによるブルース・ハープもクリスの歌声に寄り添う。ロック衝動に忠実なジェットは、一度は潔く歩みを止めた。だからこそ、ジェットを求める声に応え、そしてジェットの楽曲に徹することが出来たのだろう。個々のプロジェクトの今後も楽しみではあるが、極めて健全なモチベーションに衝き動かされた、見事なステージであった。(小池宏和)

【来日レポ】ジェット @ 新木場Studio Coast公演 - Photo by Rie FujiwaraPhoto by Rie Fujiwara
※写真は3月8日・大阪公演のものです。

〈SETLIST〉

Get What You Need
She's a Genius
Rollover D.J.
Lazy Gun
Black Hearts (On Fire)
Skin and Bones
Shiny Magazine
Seventeen
Walk
Look What You've Done
Kings Horses
Come Around Again
Bring It on Back
Are You Gonna Be My Girl
Put Your Money Where Your Mouth is
Take It or Leave It
Get Me Outta Here
Rip It Up
(encore)
Shine On
Move On
Last Chance
Cold Hard Bitch
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