今年の5月にメンバー2人が脱退し、菅原達也(Vo・G)、出嶋早紀(Key・Vo)、富山京樹(G)の新たな3人体制でリスタートしたロックバンド、め組。ファンの心配を他所に、バンドは10月3日にミニアルバム『Amenity Wear』をリリースし、その活動の勢いをさらに加速させようとしている。本稿では、新作を引っさげての全国ツアー「め組“Amenity”ワンマンツアー ~セイイェーイって言ってる場合じゃない!~」の初日をレポートしていきたい。なお、ツアーは現在も絶賛進行中なので、他公演に足を運ばれる方でネタバレを気にされる方は、以下閲覧にご注意を。
全国6ヶ所で行われる今回のツアー、初日の舞台は名古屋HeartLandである。定刻19時、ステージに登場しため組のメンバー。今回のツアーでは、サポートの寺澤俊哉(B)と外山宰(Dr)が加わり、新たなバンドアンサンブルを模索しているめ組。その効果は早速オープニングから現れ始める。“お化けだぞっておどかして”、“500マイルメートル”といった「変則ポップチューン」が、この5人によって、よりグルーヴィンな楽曲として再現されているのだ。これにより菅原が書く鉄壁のメロディラインが、さらにはっきりとその輪郭をあらわしていく。前半パートを終えて既に汗だくになった菅原は「最強のサポートメンバーが加わったこの5人の、今日はデビューライブのつもりで挑んでいます!」と自信満々に宣言。ステージ最前で見ているオーディエンスの「うんうん」と頷く様子が、彼のマニフェストに揺らぐことのない承認を与えているのだ。
新バンドのガチッとハマったアンサンブルもさることながら、このツアーで浮き彫りになるのは新作『Amenity Wear』の楽曲の素晴らしさだ。20代後半の焦燥感を歌った、め組流ブルース“5.4.3.2.1”は、ライブならではのコール&レスポンスも加わり、フロアの一体感をさらに加速させていく。“しあわせのほっぺ”は、爽快なコーラスが加わるストレートなポップチューンかと思いきや、時折パンキッシュなパート、さらにはジャジーな展開も加わることで、め組ならではのオリジナルブレンドが配合された1曲(こういう曲をさらっと演奏できてしまうバンドにも驚きだが)。そして新作ではラストに収録された“真夏の朝 2人乗り”は、会場の空気をドラマチックに変化させる力を持った1曲であり、その物語性と叙情性が、あらためて色濃く浮かび上がってくる。さらに紅一点である出嶋がメインボーカルを務めた“愛をさけるチーズみたいに”は、出嶋本人いわく「一見すると恋愛の歌詞のようだけど、新体制になって不安を抱えていた自分を奮い立たせるような曲にもなっている」とのこと。鍵盤を弾かずに、ハンドマイク1本でステージ中央に立ち、まさに自らを鼓舞するように歌い上げる彼女の姿は、め組のニューモードを象徴する場面のひとつだ。
そして本編の後半戦は、ツアーのテーマソングと言ってもよい“Amenity”で幕を開ける。先日MVも公開された本ナンバーは、菅原いわく「徹頭徹尾、自分のことを歌った曲」なのだが、とあるファンの「あなたは、あなたのままでいいって、そう言ってくれる曲のような気がする」というツイートを彼が発見し、あらためてバンドを始めた当初の思いを噛み締めたそうだ。すなわちそれは「バンドマンはみんなのヒーローなんだ」ということ。そんな菅原の思いと覚悟をのせて歌い上げられた“Amenity”は、この日一番のアンセムとして、オーディエンスの心のど真ん中へと届けられていく。
本編の終盤は、とにかくエモーショナルなロックモードでライブハウスを熱狂させ(特に“悪魔の証明”の、ワンマンならではのスペシャルアンサンブルは身悶えするほど強烈!)、しかしアンコールではその勢いに任せることなく、ドラマチックな展開もきちんと用意することができる――ライブ全編を通して強く感じることができたのは、め組というバンドの多彩な楽曲群とそのスキルの高さ、そして、どのバンドとも近接することのない確固たるオリジナリティだ。その証拠に菅原は「決して歩みの早いバンドじゃないけど、この唯一無二のバンドのボーカリストとして、僕は絶対的な自信を持っている」と語っていた。ツアーはここから10月27日(土)札幌、11月3日(土・祝)福岡、11月11日(日)仙台、11月18日(日)大阪、そして11月25日(日)東京でのファイナルと続いていく。まだめ組を知らない音楽ファンにこそ、彼らのライブをぜひ体感してほしい。(小竹憲男)
め組/名古屋HeartLand
2018.10.19