手元の時計で18時07分、暗転した場内が、満員の観客の歓声に包まれる。いよいよ2004年4月の来日ツアー以来となるレディオヘッドの日本公演が始まる。
今回のツアー写真でよくみかける赤いパンツと黒のフレッド・ペリーのポロシャツを着込んだトムがステージに姿をみせるとひときわ大きな歓声が。変拍子が印象的な『イン・レインボウズ』のオープニング曲“15ステップ”でスタート。阿波踊りをゆるくしたみたいに腕を交差させる、“トム・ダンス”もさっそくみられた。今回のツアー、各国のセットリストを見ると「どうして僕は出発点に戻ってきてしまうんだろう」「どうして僕は道を間違えたその原点に戻ってきてしまうんだろう」と歌われれる、この曲を1曲目にもってくるパターンが多いが、レディオヘッドのライブのオープニングとして実にぴったりだと思う。
ステージの天井から大量の細長い照明ポールが吊るされており、さながら神秘的な竹林のようにもみえるし、マンハッタンの林立するビルのようにも見える。いずれにせよ、これまでみたこともないセットで、ツアー写真を見て異様さを感じていたけど、こうして生で観てみると、えもいわれぬ迫力がある。背景には巨大な横長スクリーンが据えられ、5分割された各画面の中に、5人のメンバーの側に設置したカメラの映像が曲にあわせ切り替えられながら、時にグリーンに、時にレッドでと単色で映写されていく。カメラは、トムの左手側や頭上、ジョニーの足元、コリンやエドの正面や側面、フィルの手元などに据え付けられており、各メンバーが曲ごとにどんな動きをしているのかが、一目瞭然。ついついこちらに見入ってしまうことも何度かあった。
今夜のトムの第一声は「コンバンワ」。スケール感に溢れる力強いイントロが繰り出され、場内がゆれる。2曲目は“エアーバッグ”だ! 続けて“ジャスト”。そして、コリンとジョニーによるティンパニーが力強くオーディエンスを鼓舞する“ゼアゼア”。毎晩セットリストを変えるレディオヘッドだが、今夜は冒頭から畳み掛けてくるような展開だ。と思ったら一転して、ステージが情熱的な真っ赤なライトに照らし出される。『イン・レインボウズ』中最もロマンチックで、幻惑的な“オール・アイ・ニード”を、ピアノを弾きながらトムがしっとりと歌い上げる。
今夜は、『イン・レインボウズ』の楽曲を冒頭から終りまで、まんべんなく散らしながら、『ザ・ベンズ』『OKコンピューター』『キッドA』『アムニージアック』『ヘイル・トゥ・ザ・シーフ』という各アルバムからの曲を3、4曲ずつ披露している。次に何がくるのか、かたずをのんで見守る、曲の転換時の客席の緊張感をはらんだ静寂は独特だ。イントロが鳴り出してからの歓声とのコントラストにゾクゾクする。トムが「サンキューベリーマッチ」「アリガトウ」「ハイ、ドウモ」といった短めのMCを時折挟むのみで、スピーディーな進行。4年前の来日時の関東公演の環境に比べ条件がいい音響で、『ヘイル・トゥ・ザ・シーフ』の曲たちをじっくり聴けたことも個人的にはうれしかった。それにしても『イン・レインボウズ』の楽曲は、彼らのディスコグラフィーの楽曲の中でも、際立った包容力を持っているように感じられた。判りやすく盛り上がれるフィジカルに訴えてくる即効性的な側面は薄いかもしれないが、そのとてつもなさは、あらためてライブという場で露になったのではないだろうか。
また、トムがローズ・ピアノの前面にチベット国旗を掲げパフォーマンスされた“エヴリシング・イン・イッツ・ライト・プレイス”も染みるものがあった。2度のアンコールに応え、アンコールだけでも計7曲を披露してくれたが、“ハウ・トゥ・ディサピア・コンプリートリー”での幕切れは、あまりに幻想的過ぎで、魂抜かれました。早く次のライブが観たい。国際フォーラム公演が行われる10月7日は、トム・ヨーク40歳の誕生日の日でもある。(森田美喜子)
1.15 Step
2.Airbag
3.Just
4.There There
5.All I Need
6.Pyramid Song
7.Weird Fishes/Arpeggi
8.The Gloaming
9.Myxomatosis
10.Faust Arp
11.Knives Out
12.Nude
13.Optimistic
14.Jigsaw Falling Into Place
15.Idioteque
16.Fake Plastic Trees
17.Bodysnatchers
アンコール1
18.Like Spinning Plates
19.Videotape
20.Paranoid Android
21.Reckoner
22.Everything In Its Right Place
アンコール2
23.Go Slowly
24.My Iron Lung
25.How to Disappear Completely