世界中から熱視線。
現実にヒビを入れ、その奥の真実を引っ張り出す新世代ラディカル・ポップの正体
文=小川智宏 写真=長澤紘斗
僕の見ている赤とあなたの見ている赤は果たして同じ色なのか?という哲学的問いがあるが、4s4kiの音楽を聴いているとそれと同じ疑問を突きつけられたような感覚になる。「本当にそう思ってる?」。1曲ごとに、1フレーズごとに、そう訊かれているような気分になるのだ。ダークで同時に極彩色。超現実的で同時に超切ない。4s4kiのクリエイティブには常に相反する要素がカオティックに混在している。グロテスクなものに美しさを見出すことがあるように、整えられた美に醜悪さを感じることがあるように、4s4kiはいつの間にか画一化されたモノの見方に鉄拳制裁を加え、常識だと思い込んでいた世界観や価値観の回路をスイッチする。ついにリリースされるメジャーデビューアルバム『Castle in Madness』はその極致みたいな作品だ。さあ、世界のシーンとリンクしながらジャンルも言語も超越してノイズを撒き散らす彼女が描き出す、今もっともラディカルな「ポップ=普遍」の内側を覗いてみよう。(小川智宏)
(『ROCKIN'ON JAPAN』2021年8月号より抜粋)