ロックバラードの新境地がバンドをさらに加速させる。
サプライズリリースの新曲“Broken Heart of Gold”徹底レビュー
文=高橋智樹
まさに最高の「サプライズ」だった。
4月16日に配信開始されたばかりの“Renegades”に続くONE OK ROCKの新曲“Broken Heart of Gold”がリリースされたのは5月28日。その前日、メンバーによるYouTube生配信の中でサプライズ的に新曲の存在がアナウンスされ、驚きと感激の中でリリースの時を迎えたのだった。
とはいえ。2012年以来脈々と続いてきたONE OK ROCKと映画『るろうに剣心』の「盟友関係」を振り返れば、“Renegades”が主題歌として提供された前作『るろうに剣心 最終章 The Final』に続き、同シリーズのフィナーレを飾る『最終章 The Beginning』のためにONE OK ROCKの新曲が制作されているのでは?と想像した人は決して少なくなかったことと思う。
が、僕がこの“Broken Heart of Gold”を「最高のサプライズ」と感じた何よりのポイントは、傷ついた魂に挽歌と哀歌を同時に捧げるかのようなこの楽曲が、不安と退廃の渦巻く現在の「勝者なき時代」において、僕らの想像を遥かに凌駕する「渾身の祈り」としての純度と強度を厳然と体現していたから――に他ならない。そして、それはそのまま、この困難な世界において「ロックバンドの存在証明」の域を超越してONE OK ROCKが鳴らしている「僕らの希望」のリアルを、改めてはっきりと物語るものでもある。(以下、本誌記事に続く)
(『ROCKIN'ON JAPAN』2021年8月号より抜粋)