現在発売中の『ROCKIN'ON JAPAN』7月号表紙巻頭に米津玄師が登場!(ウルトラマンは)すごく孤独だろうなと思う。
でも、表情ひとつ変えず、凛と、毅然と、人間を守るために戦うというのは、やっぱり見習うべきものがある。
願わくば自分もそういうふうになりたい
『シン・ウルトラマン』主題歌“M八七”、そしてツアー「変身」を語る
インタビュー=山崎洋一郎 撮影=水谷太郎
《君が望むなら それは強く応えてくれるのだ
今は全てに恐れるな 痛みを知る ただ一人であれ》(“M八七”)
これほど力強い歌詞を米津がこれまで歌ったことはなかった。皮肉も逆説も使わずに、屈折も自虐も交えずに、これほど熱くストレートに前向きなメッセージを歌い上げたことはこれまでなかった。米津の歩みを知っている者にはそれがいかに画期的なことであるかはわかると思う。“M八七”は米津玄師にとって決定的な一曲だ。
映画『シン・ウルトラマン』の主題歌として作った、ということが大きいのだろう。どれほど困難な戦いであろうと、どれほどの苦悩を内に抱えていようと、同じ表情で命を懸けて戦い続けるウルトラマンという存在の意味を、本質を、米津は曲・歌詞・歌・サウンドのすべてを総動員して描き出している。そこでは皮肉も逆説も通用しない、屈折も自虐も必要がない。だから、米津玄師は自分の奥にある熱い心を――人生において抱く強い熱意や、与え合う祝福を――力強くストレートにアウトプットすることができたのだと思う。
米津玄師は、曲を作るごとに自分の中にある大きなテーマと向き合い、それを乗り越えて新たな世界へと踏み出す。そこで掴んだ確かな「意味」と「実感」を、美しい音楽へと昇華させていく。僕たちリスナーはそれを聴くことで、その美しさや快楽とともに「意味」や「実感」を感じ取り、大きなテーマを見渡すことができる。こんなにも本質的な音楽体験を可能にしてくれるアーティストはそうはいない。日本の音楽シーンに米津玄師がいて本当によかったと、今回の“M八七”を聴いて改めて思わざるを得なかった。
既発曲である“POP SONG”、新たなカップリング曲“ETA”について、そして秋からスタートするツアー「米津玄師 2022 TOUR / 変身」についてもじっくりと語ってくれた。密度の高いロングインタビュー、ほぼ全文掲載でお届けします。(編集長 山崎洋一郎)
(『ROCKIN'ON JAPAN』2022年7月号より抜粋)