確固たる個性があるのに変幻自在でもあるその声――
なぜasmiの歌は時代に求められるのか? そのキュートさの奥にある本質に迫る
インタビュー=矢島由佳子
SNSを開けば彼女の声が聴こえてこない日はない、と言っても過言ではない。今多くのミュージシャンがその声を使ってクリエイトしたいと思う存在。さらに、多くのリスナーが自分の日常を投稿する時に使いたいと思う歌。思い返すと、私が初めてasmiの声を聴いたのは“ヨワネハキ”(MAISONdes名義。作詞作曲は和ぬか)だった。外に出るのがだるくて家で画面を眺めている私に「自分のことじゃん」と思わせた。そして彼女のオリジナル曲を聴けば、J-POP、ヒップホップ、ボカロなどをナチュラルにクロスオーバーさせたサウンドに、そのキュートな声やビジュアルから浮かび上がるイメージを裏切る言葉がいくつも並んでいて、ぶっ飛んだ。ファンタジーで包み込むような声色なのに、芯からは痛みも諦観も切なさも欲望も匂うasmiの歌声は、理想と現実に挟まれたいくつもの感情を引き立たせる。ただの「いい声」ではない。「かわいい」で終わらせるわけもない。asmiを構成する多面性を解剖した。(矢島由佳子)
(『ROCKIN'ON JAPAN』2022年11月号より抜粋)