ELLEGARDEN、16年ぶりの新曲をサプライズリリース! 4人の今が鳴り響く、2020年代のエルレサウンド“Mountain Top”は、どこが進化し、何が変わらないのか?

ELLEGARDEN『Mountain Top』
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ELLEGARDEN Mountain Top
16年ぶりに友達に会えたような気持ちだ。変化や成長は見えるけれど、大切なところは、あの頃のまま。

9月9日、ELLEGARDENが16年ぶりの新曲“Mountain Top”を、その日に開催された10-FEETBRAHMANマキシマム ザ ホルモンという盟友たちとの対バンライブ『BAND OF FOUR -四節棍-』で披露し、告知もなく配信リリースした。昨年12月、彼らは今年の2月からアルバム制作に入ることを宣言していたし、9月9日は “No.13”で歌われている《September 9th》だし、「何かが起きるかもしれない」と予感していた人もいるだろう。とはいえ、「ライブで新曲を披露する」「配信で新曲をリリースする」というアクションは、かつてのELLEGARDENを知る私には新鮮だった。そして、ライブと仲間を愛する揺るがない姿勢と、「今のELLEGARDEN」をひしひしと感じた。

もちろん楽曲にも、歌詞、メロディ、演奏、すべてに今のELLEGARDENが落とし込まれている。《俺は最後の勝負を待ち望んでいる(和訳)》という締めを含め、冒険物語のようでありながらストレートな歌詞からは、今の細美武士、そして4人の心境を受け取ることができる。そして、いきなり駆け出すわけではなく、一歩一歩を踏み出すようにビートを刻みながら、切なさを滲ませた力強いメロディを、シンプルな演奏で響かせていく曲調にも、今の彼らが表れていると思う。シンプルとはいえ、聴きどころはちりばめられており、16年を経たから得られたであろう、プレイヤーとしての成長や、思いを形にする力が発揮されている。個人的には《Get back》と歌う後半から、もうひとつ扉を開くような意思を感じた。

もしかしたら、「ELLEGARDENなのに速くない」と思った人もいるかもしれない。でも、少なくとも私がELLEGARDENに速さを強く感じたのは、『BRING YOUR BOARD!!』(03年)、『Pepperoni Quattro』(04年)あたりまでだ。『RIOT ON THE GRILL』(05年)、『ELEVEN FIRE CRACKERS』(06年)になると、速さより重さに心を震わせていた。もっと言えば、『DON'T TRUST ANYONE BUT US』(02年)の頃は、とにかく歌詞とメロディがいいと思っていた。彼らは、(一枚のアルバムに様々な楽曲が収録されていることは前提として)これまでも時期によって変遷を遂げてきたのだ。そういう意味で、歌詞とメロディが際立つ“Mountain Top”は、そぎ落とされて原点が見える楽曲かもしれない。

しかし、もちろん、一口に原点復帰と軽々しく言えるものではない。アレンジだけではなく、ムードも含めて、カオティックに感じるほどに究極を突き詰めた『ELEVEN FIRE CRACKERS』の次作ということを考えると、あそこからここに至るまでに16年かかったのか……と、胸の奥がグッとなる。“Mountain Top”は、その「グッ」が共鳴するような楽曲、という意味で、今のELLEGARDENそのものを表現していると感じられる。ただ、もしかしたら、この「グッ」は、彼らと世代が近かったり、彼らの音楽をずっと聴き続けてきた人に起こる現象のような気もする。でも、それぐらい、彼らはバンドの道のりや、年齢や状況も含めて、その時の自分たちを正直に表現することを、ELLEGARDENにおいて大切にしているのだと思う。そう、エモーショナルとかパンキッシュとかヘヴィといったジャンル感で成り立つ音楽ではなく、この4人が鳴らせばELLEGARDENの音楽になるのだ。バンドの基本中の基本、みたいな話だけれど、プロジェクトのように感じられるバンドも目立つ昨今(もちろん、それもひとつの表現なのだろうけれど)、新作においてELLEGARDENがやっていることは、「バンド」とはなんぞや、という問いを世の中に投げかけるのではないだろうか。もちろん、4人は、バンドってこういうものじゃん、って、やっているだけかもしれないけれど。でも、“Mountain Top”のMVも、本当に「4人、以上!」みたいな潔さで、それでいてスケール感があって、バンドというものの意味合いと可能性に、改めてワクワクせずにはいられなくなる。

振り返れば、最初からELLEGARDENは、そういうバンドだった。先述したように音楽性は変遷を遂げてきたわけで、軸を貫いているのは何より「この4人」というところ。また、活動休止前と今とでは、彼らのレーベルも、スタッフも、さらには音楽シーンも世界情勢も変わっているけれど、やっぱり「この4人」であるところは変わらない。千葉の仲間が小さなライブハウスで活動をはじめ、「この4人なら大丈夫」という確信を抱きしめて、仲間やファンや携わる人を増やしながら、いち時代を築く存在となったELLEGARDEN。そうして、たくさんの人に囲まれつつも、特に活動再開してからの彼らは、「この4人」であることがELLEGARDENにとって大切だと知っているし、そのやり方も心得ているように見える。だからアメリカにも行ったんだろう。そして、ほぼ4人だけで、バンドだけで、海や山のように深く広い、“Mountain Top”を生み出した。ただ、スケール感はあるけれど、とても近くから聴こえてくるように感じるのだ。むしろ、『ELEVEN FIRE CRACKERS』の頃よりも親しみやすい距離感に思える。それも、今の4人の関係性や、一人ひとりの人間性が反映されているが故ではないだろうか。

2018年に活動再開してから、ライブでは現在進行形の姿を見せてきた彼ら。過去の楽曲も、古びていないどころか、まぶしいほどの説得力をもって響かせている。しかし、新曲が発表されたことで、今の彼らの体に、今の彼らの心が、ぴったりとはまった姿が現れたように思えたことはたしかだ。

とはいえ、今のELLEGARDENという一枚の絵が見られるのは、アルバムが完成した時になるだろう。これまでも彼らはアルバムごとに章を重ねていくように進化してきたし、「アルバム」という多面的な表現を重視してきたと思うから。つまり“Mountain Top”も、あくまで今のELLEGARDENの一部分だ。でも、絵に喩えるならば、その中の顔のような、目のような、意思を伝える重要な一部分に思えてならない。だから、ちょっとフライングかもしれないけれど、言わせてほしい。

お久しぶり、また会えてうれしいよ。(高橋美穂)

(『ROCKIN'ON JAPAN』2022年11月号より)

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