現在発売中の『ROCKIN'ON JAPAN』11月号別冊にsumikaが登場!メンバー全員がやったことないのは、何かを終わらせるという気持ちで音楽を作ることなんだ、と思ったからForのあとにピリオドをつけた
10年目の結晶『For.』ブック
なぜsumikaにとっての「4(Four)」は『For.』でなければいけなかったのか――10年目のsumikaを今あなたに伝える特別別冊!
インタビュー=海津亮 撮影=新田君彦
10周年イヤーに突入しているsumikaがリリースした待望の4thアルバムは『For.』というタイトルだった。前作『AMUSIC』はその造語にトリプルミーニングを持たせた実にsumikaらしいタイトルだったが、今作『For.』にも3つ、いや4つのsumikaの存在や意味が内包されている。それはまさに2022年のsumikaがどこにいて、これからどこに向かうのか、というビジョンを雄弁に物語っていると思う。
キャリア10年目を超えていくバンドは今のシーンの中にたくさんいる。そして言うまでもなくその10年の物語はバンドの数だけ違う。でもsumikaのそれは、相当に特殊で、相当に苦い。10年で幕を閉じた前身バンドを経て再始動したsumikaは、挫折を知っているからこそ希望を歌えるバンドなのだと思う。10年目を迎えたsumikaは、ここからキャリアハイとなる活動期間に向かっていく。そこで彼らが自らに課したのは、4人で一旦何かを終わらせることだった。いや、終わらせる覚悟を持つことだった、というのが正しい。それをしなければ、過去が違う4人が改めて横一線になり「まだ経験したことのない11年目」に入っていけないのだろう。
アルバムは1曲目“New World”で幕を開ける。過去3作に共通する明るくポジティビティに溢れたオープニングナンバーとはかなり印象が違う。《安定くだらねえ/停滞なら衰退です》から始まるこの曲は、《退路ならもう断っちゃってる》《覚悟はとうにできちゃってる》と歌う。何かを終わらせる覚悟を持って退路を断って変化することに向き合う、これがsumikaの現在地なのだと思う。
そしてアルバムリリースに先立って、10周年イヤーがスタートしてライブで披露し続けているのが“透明”だ。これまでの10年、そしてこれからの10年、目の前にある愛から、sumikaの音楽を支えてくれるすべての人への愛、それらを全部受け止められるスケールの大きな《愛している》を繰り返すこのナンバーは、10周年イヤーのsumikaにとって決意表明と言えるだろう。まさに今はまだ透明だが、次の10年が何色に変化していくのか、期待せずにはいられない。
4人のsumikaが作った4枚目のアルバムはなぜ「4(Four)」ではなく『For.』でなければいけなかったのか、そして、なぜタイトルにピリオドが必要だったのか、4人のsumikaが語ってくれたロングインタビューとロングレビューの2本立てでお届けする別冊『For.』ブック。sumikaの今、がしっかりあなたに届くことを願う。(海津亮)
(『ROCKIN'ON JAPAN』2022年11月号より抜粋)