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COUNTDOWN JAPAN 12/13 クイックレポート


静謐さとノイズが同居するピアノのSEが止むと、ドラム、ベース、ギターが横一線に並んだステージにメンバー3人が登場! 1月23日に、待望の初フルアルバム『再生の風景』をリリースするthe cabs。9mm Parabellum Bulletやcinema staff、mudy on the 昨晩を擁する残響レコードの秘蔵っ子である彼らへの期待を表すように、フロアから熱い視線が注がれている。「みなさん、(僕等を)選んでくれて本当に有難うございます。the cabsといいます!」と早口で叫ぶと、3人のラフなジャムから1曲目”カッコーの巣の上で”に突入! ベース&ヴォーカル首藤の清冽なハイトーン・ヴォイス、ソングライターでもあるギタリスト高橋が吐き出す痛切なシャウト、そして異様に手数の多いドラムス中村のパワフルなリズムという独特なアンサンブルが、鮮やかな存在感を見せつけていく。

走り出しのテンションをそのままに2曲目“二月の兵隊”を駆け抜けて、3曲目“anschluss”では、ぐっと手数を減らして首藤のメロディと言葉が紡ぎだす物語性にフォーカスしてみせる。いわゆる「残響っぽさ」と言うべきヴァイオレントな楽曲展開の方程式から、シンプルに削ぎ落とされた方向性に勇気を持って踏み出したこの曲に、彼らの進化が刻まれている。MCで高橋が「みなさん、本当はPerfume観たいですよね(笑)」と卑下してみせつつ、「絶対に言いたくなかった言葉を初めて言いますっ! 名前だけでも覚えて帰って下さい!」と言い放ってメンバー紹介を絶叫したエモーションの爆発ぶりは、もはや感動的ですらあった。

そしてラスト2曲、カッティングするリズムが軽快な“camm aven”、そして“キェルツェの螺旋”は彼らの集大成とも言うべき大熱演。メロディ、シャウト、そして複雑なアンサンブルがぐちゃぐちゃになる寸前でぎりぎりバランスを保つような狂気じみた美しさが、つんのめるように演奏する3人の体全体から放射されるようだった。来年は、おそらく彼らにとってより大きな飛躍の1年になるはずだ。そんな確信に満ちたステージだった。
(松村耕太朗)