たとえば『スッキリ』でインタビュアーのHiro(森内寛樹)がそれぞれにとって思い入れのある楽曲を質問した時、テツヤの“ロビンソン”に続き、田村&﨑山のリズム隊がそろって“恋のうた”と言った瞬間、なるほど!といろいろ納得できた。ビートパンクからスピッツならではのオリジナリティをどのように獲得していったのかが一瞬で伝わる名チームプレー。そしてマサムネは“紫の夜を越えて”をあげ、常にその先に向かって歩き続ける、振り返らないスピッツの姿を伝えた。
そこで「バンドを続けたいというのが目標」ときっぱり発言していた彼が、『NEWS23』で「ヒット曲を出し続けることへの重圧について」質問され、「バンドが続けられていれば、お客さんが減ってすごくキャパの小さい所に戻ることになってもそれは元の形に戻るだけ」と答えていたのも印象深かった。
デビュー30年、結成から数えると34年、同じメンバーで、休止や再結成もなくメインストリームでの活動を続けているバンドは世界中を見渡しても稀で、本当にかけがえのない存在だ。
持続可能な世界を目指す時代の潮流の先に、スピッツは今、それを実践し続けてきたひとつの証しとして立っている。
バブル時代には逆行しているように見えた彼らの感性や思想やスタイルは、いつの間にか時代が目指すずっと先にあったという壮大な物語にぞくぞくせずにはいられない。
現在発売中のJAPAN5月号では、なぜスピッツにはそれが可能だったのかをキャリアをひもときながら解説しているが、このふたつのインタビューで、彼らの口から確かな答えをもらった気がする。
今週末の「Mステ」スペシャルで演奏するスピッツの姿に会えるのがとても楽しみ!
ちなみに、『NEWS23』での「シンガーとしての自覚がかなり低い。バンドマンって感じの自覚」とか「ちょっとまだ恥ずかしいぐらいの感じ」とかいう草野マサムネの言葉に小川アナはすごく驚いていたが、そりゃそうだろうと思った。
ずっと前、「自分がイギー・ポップみたいな声だったら……」という隣の芝生が青いにもほどがある発言がインタビュー中に飛び出しびっくりした経験が自分にもあるが、イギー・ポップみたいな声じゃなくて本当によかった(本人には申し訳ないし、イギーむちゃくちゃ好きだけど)、それによってどれだけ多くの日本国民を幸せにしていることかとしみじみ噛みしめたのを、テレビを観ながら思い出しました。
まだまだ終わらない30周年祭を祝いたい方は、JAPANにも集ってみてください。
特集に掲載された天野史彬さんによる“紫の夜を越えて”のレビューはこちらからも読めます。https://rockinon.com/disc/detail/198274
(井上貴子)
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