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    第12回:B-DASHのセッションは、実は結構むちゃだ

    第12回:B-DASHのセッションは、実は結構むちゃだ

    B-DASHのセッション・ゲストは、まず、白井幹夫御大。
    いわずと知れた、元ザ・ハイロウズのキーボーディスト。
    ハイロウズの前は、後期ザ・ブルーハーツの
    サポートを務めていたのも有名ですね。

    そしてもうひとりは、ラッパー/トラックメイカーのROCK DOGG。
    B-DASHと以前から付き合いがあり、このセッションが実現したようです。
    彼のブログには、タナマンから熱い言葉でこのセッションの
    オファーをもらった、という、ちょっといい話が綴られています。

    で。いずれも優れたミュージシャンだし、楽しみだけど、
    ただ、これ、実はよく考えると、相当強引というか、
    音楽的には、「ああ、なるほどねえ」と納得できるような、
    順当なセッションではない。と思いません?

    たとえば、白井さんのあのピアノと、ハイロウズやブルーハーツの、
    音楽的な共通点は、何でしょう。
    ブルース、だと私は思います。
    ブルーハーツもハイロウズも、パンクではあったけど、同時にブルース要素も大きいバンドだった。
    あと、ハイロウズと白井さんと考えると、ブルースに加えて、
    「昔のハードロック」という共通項もありました。
    2ndアルバム『タイガーモービル』とかそうですよね。
    白井さん、元めんたんぴん(70年代に活躍したハードロックバンド)だし。

    で、さあ、B-DASHです。どうでしょう。
    パンクはある。でも、まったくないでしょう、ブルース要素も、ハードロック要素も。

    そして、ROCK DOGG。ラッパーです。ヒップホップです。
    ミクスチャー・バンドが、ラッパーと組むのは珍しくない。
    というか、ごくあたりまえなことだ。メンバーにラッパーがいる、というのも然り。

    ただし。これがパンク・バンドになるとどうか。
    あんまり例がないのではないか。
    いや、ないことはないが、実は結構、ハードル高いと思う。
    なんでか。すんごい物理的に、ざっくり言いますね。
    メロコアとかエモのサウンド・スタイルの音に、ラップをのっけようとすると、
    「はええよ!」
    ってことに、なるからです。

    ラップをのっけやすい曲の速さって、だいたい決まっています。
    BPMでいうと、80とか90とかせいぜい100とか、それくらい。
    たとえば、実はRIP SLYMEって、ラップ・グループとしては
    異様なくらい「速い曲」が多いんだけど、それでも120から130の間くらいです。

    というわけです。
    ね。ちょっと想像つかないでしょ。B-DASHとROCK DOGGが、
    どう取っ組み合うか。


    つまり、白井幹夫×B-DASHも、ROCK DOGG×B-DASHも、
    実はミスマッチなわけです。
    白井さん、過去にB-DASHのレコーディングには参加しているが、
    ライブとなるとわけが違うだろうし。

    B-DASH、そのへんに気づかなかったんだろうか。
    言うまでもない。気づいていないわけはない。
    逆だと思う。だから、やるんだと思う。
    「なんか近いジャンルの友達呼んでやるかあ」じゃつまんない、
    もっとなにがしかのトライアルをしないと。
    ここでしか起こせない化学反応を生まないと。
    と、思ってくれたんだと思う、3人が。
    そのチャレンジ・スピリットがすばらしいと思うし、さすがだなあと思うし、
    だから、 大変に楽しみにしています、私。

    期待しましょう。5月4日出演。

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