エミネム8年ぶり!そして日本フェス出演のN.E.R.D.、チャーチズ、ダーティー・プロジェクターズなど!NYフェス最終日。

エミネム8年ぶり!そして日本フェス出演のN.E.R.D.、チャーチズ、ダーティー・プロジェクターズなど!NYフェス最終日。

NYで6月1-3日に行われたガバナーズ・ボール・フェスの最終日はなんとエミネムが大トリだったため、フェス期間中最大の人出となった。この日は、日本のフジロックや、サマーソニックに出演のバンド、N.E.R.Dから、チャーチズダーティー・プロジェクターズも出演した他、ティネージャーが最大の盛り上がりを見せたカリードなど素晴らしいライブが続出だった。

1)何と言ってもエミネム!

エミネム8年ぶり!そして日本フェス出演のN.E.R.D.、チャーチズ、ダーティー・プロジェクターズなど!NYフェス最終日。 - pic by Governors Ballpic by Governors Ball
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エミネムはドラッグ中毒を克服し復帰して以来、アルバムをサポートする形での全米ツアーは行っていない。フェスなど単発でしかライブをしていないし、主にヨーロッパのフェスにばかり出ている。調べてみたらNYでも特別なイベントをのぞくと、ライブをしたのは何と2010年以来になる! 盛り上がらないわけがない。それに、今回久しぶりにアメリカでライブをしたのも彼なりに理由があってのことだわかる内容でもあった。

50セントなどが登場するし、花火は上がるし、キャリアを代表するヒット曲の連発。”My Name Is”が披露された瞬間に、一体これって何年前だろうと思ったら、ほぼ20年前だと気付き驚愕した。エミネムは、そこからこの巨大な観衆が共感するような曲を作り続け、それを背負ってここまで来たと思うと感慨深いものがった。

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"Stan”も、”Love the Way You Lie"も、50セントとの”In Da Club"も、”Real Slim Shady"も聴きたい曲は全て演奏されたと言って良いと思うのだが、この日の印象的だったのは、インダストリアルな街の中で鉄塔の上に星が輝く映像が背景に映し出されていたこと。それは、彼の生まれ育った場所デトロイトとそして、アメリカを象徴していたと思う。

前半に、「俺はずっとNYでツアーしてなかったから。本当に久しぶりに帰って来て嬉しいよ。アメリカ以外の国ばかりでツアーしてきたから。アメリカを懐かしく思うし、アメリカ人であることを誇りに思うんだ」と語り、”White America”が始まった。この曲は、彼が白人ラッパーとして政府の目の仇となり、子供達に悪影響を与えるとセンサーされそうになったことが元に作られた曲で、2002年に発売されたものだ。

しかし、その内容は今のアメリカを映し出すものにもなっている。エミネムは塔の上に輝く星を指して、「この美しい国の市民であることを誇りに思う人?」「アメリカにはアメリカ政府が誓った”表現の自由”があるわけだが/というか、そう言われているが?」とイントロを始めた。

最新作のジャケットでは、アメリカ国旗の後ろで頭を抱えるエミネムが映し出されているが、この日彼の心境を一番表していたのはこの曲だったように思う。

期せずして、アメリカではNFLの選手が人種差別を訴えて国歌斉唱の時にひざまづいたことを、大統領が愛国心がないと言い、スーパーボウルで優勝したチームをホワイトハウスに招待しないという出来事が起きたばかりだった。"White America”で語れていることは悲しいかなそのまま今正に起きているのだ。

しかし興味深かったのは、この日はストリングスなども交えて時にエモーショナルな瞬間を演出することもあったり、彼が本来強烈に言いたいであろう政治的なメッセージは全面に出さずに、最小限に留めていたこと。それも、エミネムの偉いところだと思った。とりわけメッセージ性があるからか始まりはとりわけヘビーでもあったのだが。久しぶりのフェスの場で、全ての人をエンターテインすることが第一だと捉えていたと思うから。

新作からはエド・シーランとの共演作”River”も披露され大合唱。アンコール直前に雨が降ってきたのだけど、誰も帰る人はいなくて(少なくとも私の周りは)、アンコールの”Lose Yourself”で大大大合唱で29曲圧巻のライブは終わった。ファンの期待を絶対に裏切らないエミネム。さすが大トリに相応しい最高のライブでフェスを締めくくってくれた。

エミネムはこの日のバックステージの模様をインスタにポストしている。



2)ライブ自体が超レアで貴重なN.E.R.D(フジロック出演)

エミネム8年ぶり!そして日本フェス出演のN.E.R.D.、チャーチズ、ダーティー・プロジェクターズなど!NYフェス最終日。 - pic by JN Silvapic by JN Silva

実は、N.E.R.Dと同じくフジロックに出演するチャーチズが全く同じ時間帯で行われたため、両方を半分しか観れなかった。その中での感想を書くと、まずN.E.R.Dも、エミネム以上にNYでのライブが久しぶりであるということ。彼らも、新作『No_One Ever Really Dies』という政治的なメッセージを込めながらもエンターテイメントな作品を作ったため、エミネム同様今アメリカでステージ立つ必要性を感じたのだと思う。

ライブが素晴らしかったのは、そのアルバムの意図と同じであくまで楽しめる、踊れる場所にすることが第一で構成されていたこと。ファレルも、シェイ・ヘイリーも、とにかく常に観客を煽りまくっていた。ライブはベースによるヘビーなビートとノイズとグルーブで始まった。アングラのパンク・ロックのクラブにいるようなノリで、モッシュピットまでできていたのだ。

このライブは始めに子供が出てきて、「自分のやりたいことをやり続けるんだ」というメッセージを掲げたのだが、途中でファレルが「この場を今のアメリカよりも、ずっと良い場所にしよう!」と語る場面などがあった。

最後はリアーナと共演した曲”Lemon”が披露されたのだが、その時も、「今何曲かヘビーな曲も演奏したけど、でも、この曲はエネルギーがあって、楽しい曲だ。だからこれを最後にライブを終えたい。愛こそが俺達を団結させてくれるから」とのポジティブなエネルギーとメッセージを放つようにライブは終わった。


3)エミネム前で頑張るチャーチズ(フジロック出演)

エミネム8年ぶり!そして日本フェス出演のN.E.R.D.、チャーチズ、ダーティー・プロジェクターズなど!NYフェス最終日。 - pic by Akemi Nakamurapic by Akemi Nakamura

N.E.R.D.の間に観に走ったチャーチズは、なんとエミネムの前のメインステージで登場という大舞台に抜擢。シンセポップのバンドとしてアメリカでもそれだけの人気を獲得した証拠だ。

それにふさわしく、最新作も含めた3枚からベストの曲を披露してキャリアを総括する素晴らしいライブをしていた。しかし途中で「エミネム・ファンのみんなのためにエミネムっぽい曲をやろうと思ったんだけど、あまりに曲調が違ってごめんね! もう少し我慢してね」と言ったのが健気だった。

確かに最前列はエミネム・ファンで固まっていた。でも、その周りでは彼らのファンが踊りまくっていた。バンドが大きくなっていく過程で誰もが通る道だと思うが、チャーチズはここからさらに人気獲得するだろうというライブを観せてくれた。


4)新生ダーティー・プロジェクターズのお披露目

エミネム8年ぶり!そして日本フェス出演のN.E.R.D.、チャーチズ、ダーティー・プロジェクターズなど!NYフェス最終日。 - pic by Akemi Nakamurapic by Akemi Nakamura
エミネム8年ぶり!そして日本フェス出演のN.E.R.D.、チャーチズ、ダーティー・プロジェクターズなど!NYフェス最終日。 - pic by Akemi Nakamurapic by Akemi Nakamura

前作『ダーティー・プロジェクターズ』は傷心の作品であり、完成形にあったと思えたバンドの体制もそこで一旦ふりだしに戻った。バンドはその作品では数回しかライブをやらず、代わりに新作『Lamp Lit Prose』を完成させ再生してこのステージに立っていた。

そのお披露目と言えるライブでいきなり新しいメンバーの女性3人のハーモニーによる”Swing Lo Magellan”で始まったのにはびっくりした。メンバーが一瞬アンバーにもエンジェルにも見える瞬間もあった。もちろん違うのだが。

この新体制はそういう意味でデイヴ・ロングストレスが理想と思っていたバンドを再構築してみせたものだったと思う。代表作『ビッテ・オルカ』を進化させたような新作の世界観が思い切り堪能できるこのライブは、エミネムがN.E.R.Dとは違う方法で今のアメリカにポジティブなエネルギーを降り注ごうとする内容であり、ダーティー・プロジェクターズが最強の形で再生したと思えるものだった。


5)何も観えなくて笑ったLil Uzi Vert

メインステージ以外では最大の観客を集めたアーティストのひとりLil Uzi Vert。私も楽しみにしていたのだがあまりに人が集まりすぎて、肩車も史上最高で全く何も観えなかった(笑)。次回はメインステージにして欲しい。


6)ティーンの心を鷲掴みのカリード

エミネム8年ぶり!そして日本フェス出演のN.E.R.D.、チャーチズ、ダーティー・プロジェクターズなど!NYフェス最終日。 - pic by Akemi Nakamurapic by Akemi Nakamura

この日は1日中曇りだったのだが、彼が満遍の笑みで登場した瞬間太陽の光が差してきたくらいあまりに多幸感溢れたライブだった。『アメリカン・ティーン』という作品を出した彼だが、実際メインステージはティーネイジャーの女の子達でぎゅーぎゅーだし大歓声。

その熱量とティーン女子からの人気はショーン・メンデス以上でこのフェスで一番だったと言っていいと思う。その歌詞ではティーンの憂鬱を歌いながら、ユーロ・ビートに80年代シンセの影響を感じるサウンドは、例えばフランク・オーシャンを彷彿とさせる繊細さがあり、しかしそれをよりポップにした感じだ。

本人曰く『アメリカン・ティーン』というタイトルには政治的なメッセージが込められていて、自分はアフリカン・アメリカンだが普通の人が期待するような典型的なアスリートでもないしマッチョな人間ではない。でもそういうアウトサイダー達も含めて『アメリカン・ティーン』なんだと言いたかった、ということ。

それをこんなポップ・ソングにして本当にティーン達が共感し絶叫してるということ以上に幸せなこともないと、希望を得たような瞬間だった。まだ20歳! 果てしない才能。これからが更に楽しみだ。個人的ベストアクトのひとつだった。

エミネム8年ぶり!そして日本フェス出演のN.E.R.D.、チャーチズ、ダーティー・プロジェクターズなど!NYフェス最終日。 - pic by Akemi Nakamurapic by Akemi Nakamura

以下、日本のフェスに出るバンドのセットリスト

N.E.R.D
Anti Matter
Kill Joy
Brain
Deep Down Body Thurst
The Neptunes Medley
Run to the Sun
Spaz
Volia
Rollinem 7's
1000
Everyone Nose
She Wants to Move
Lapdance
Rockstar
Lemon

チャーチズ
Get Out
Bury It
We Sing
Recover
Graffiti
Miracle
Never Ending Circles
Forever
Lies
God's Plan
Under the Tide
Leave a Trace
Clearest Blue
The Mother We Share
Never Say Die

ダーティー・プロジェクターズ
Swing Lo Magellan
I Found It in U
Break-Thru
What Is the Time
Cannibal Resource
Rise Above
Beautiful Mother
Dance for You
Life Style
No Intention
Impregnable Question
Cool Your Heart



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