くるりという旅(ツアー「金の玉、ふたつ」を観た)

くるりという旅(ツアー「金の玉、ふたつ」を観た)

アルバム『THE PIER』リリースツアー、今日と明日は中野サンプラザホール。

くるりの音楽は旅だ。
まだ見ぬ景色、感じたことのない感情、遠い記憶、懐かしい匂い、忘れてしまったあの人の顔、連綿と続く歴史、遥か未来。そういったものを音と言葉で辿る、終わりのない旅だ。
それは、ずっとそうだった。

辿った過去も未来も今ここの一点に収束させて爆発させるのがロックの常だとして、くるりの旅路はその逆をいく。連続写真のように次々と違う風景を描きながら、すべてを永遠のほうに放り出すような感覚。エヴァーグリーンというのとも、普遍的というのとも違う、曲が鳴らされた瞬間が、時間軸からも空間軸からも切り離されて残り続けるような。

抽象的で申し訳ないが、たとえていうならいつまでも続くデジャヴを見ているような感じかもしれない。違うかな……。じゃあたとえば、あの日の“東京”と今聴いている“東京”は違うし、そこで感じるものも違うけれど、その感情が立ち上るスピードや温度や湿度は同じ、というか。余計に分からなくなったな。とにかく僕たちは毎回違うくるりに、毎回同じように出会う。

『THE PIER』とそれまでのアルバムとのいちばんの違いは、それを自覚的に楽しんでいるかどうか、かもしれない。終わりと始まりが連なってずーっと続く旅。「桟橋」と名付けられたこのアルバムはそれを象徴しているようにも思える。

何が言いたいかというと、今日のライヴ、本当にそういうものだったということだ。僕は今日も、見たことのないくるりに、いつもと同じように出会った。
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