今年、めでたく結成20周年を迎えたASIAN KUNG-FU GENERATION。RO69ではそれを記念して、『崩壊アンプリファー』から『Wonder Future』まで全オリジナルアルバムを振り返るレヴュー特集を行います。毎日1作品ずつアップしていきます。本日の作品は2008年発表『サーフ ブンガク カマクラ』です!
恋人に振られ、そのまま返せずにいた合鍵を捨てに江ノ島の海へ向かったことを、『サーフ ブンガク カマクラ』を聴く度に思い出す。
曲に自身の想い出を刷り込ませると、何年経っても当時の温度のまま保存しておいてくれるから有り難い。「失恋をして海に行く」「『サーフ ブンガク カマクラ』を聴きながら江ノ電に乗る」というベタベタな青春劇に巻き込まれた運の悪い親友に、「あんな奴、本当はそんなに好きじゃなかったんだよ…」という強がりと涙をこぼして歩いた浜辺の空気まで思い出せる。《涙目で滲む昧の浜》を体現した、まさに“腰越クライベイビー”状態だった。
レコーディング前に練習することさえも禁止されていた一発録りの同アルバム。当時は「音が荒くて下手くそだ!」なんて一部の評価も受けていたけれど、人生は一発勝負!やってみたもん勝ち!的な活気や全10曲を合計約31分という駆け足で走り抜ける勢いが、私はとても好きだ。江ノ電に乗って想い出を投げ捨てに行った身としては、このアルバムの持つそんな勢いや思い切りの良さにかなり助けられたなぁと思う。
26年間の経験上、「あの頃は苦しかった」という話は何年か経つと大抵笑って話せるようになるし味方になってくれる。そしてそういう時に傍にいてくれた人や曲というのは、大抵が今も変わらず近くにいてくれているものだ。あの時一緒に鍵を投げてくれた親友は、将来鎌倉に住む計画を立てているから面白い。その時はもちろん江ノ電に乗って、手土産に『サーフブンガクカマクラ』を持って会いにいこうと密かに思っている。(峯岸利恵)
【祝20周年】ASIAN KUNG-FU GENERATION、全ALレヴュー大公開! 本日は『サーフ ブンガク カマクラ』
2016.04.28 18:00