ドラマ『ツイン・ピークス』25年ぶりの帰還までにあなたが知っておくべき7つのこと
2017.05.23 21:15
伝説のアメドラ『ツイン・ピークス』が、再びTVスクリーンの前に帰ってくる! ダイアン、これは大事件だ!!
と、そんな衝撃的なニュースが飛び込んできたのは、2014年10月のこと。
そして、2年半の濃密な製作期間を経た今、その待望の新シリーズ『ツイン・ピークスThe Return』の全貌がついに明らかになろうとしている――いまだに信じられないことだけど、もうすぐ、本当にもうすぐ、僕らは『ツイン・ピークス』の新作エピソードを見ることができるのだ。
今回の新シリーズの製作総指揮を務めるのは、旧シリーズと同じく、デヴィッド・リンチ(監督)&マーク・フロスト(脚本家)の黄金コンビ。
当初は「9話分」のエピソードが作られるとの発表だったが、その後、物語の構想がどんどん広がり、最終的には、なんと「18話分」の新作エピソードが製作されることになった。
全米では、つい先日の5月21日に第1話&第2話がShowtimeチャンネルで放映され、すでに大きな反響が沸き起こっている(ちなみにオープニング・タイトルのBGMは、今回もまた、アンジェロ・バダラメンティの「あの曲」だ)。
日本ではWOWOWでの独占放送が決定。記念すべき第1話のオンエアは、7月22日(土)が予定されている。
そこで今回は、「そんなに待ちきれない!」という方のために、今の時点でこれだけは押さえておきたい『The Return』の7大ポイントをピックアップ。旧シリーズのおさらいと合わせ、来たるべき壮大な新章の見どころを確認していこう。
※なお、この記事は「新シリーズのための予習」という企画上、『ツイン・ピークス』旧シリーズの各エピソードに関するネタバレを数多く含んでいます。念のため!
1. そもそも『ツイン・ピークス』って、どんな話だったっけ?
『ツイン・ピークス』は、アメリカのABC局で1990~91年に放映されたミステリー・ドラマ。タイトルの「ツイン・ピークス」とは、物語の舞台となっているアメリカ北西部の(架空の)田舎町の名前を指している。
物語は、あるとき、湖のほとりで、女子高生ローラ・パーマー(シェリル・リー)の全裸死体が発見されるエピソードから幕を開ける。難事件の謎を解くため、FBIからクーパー捜査官(カイル・マクラクラン)が派遣されるが、捜査が進んでいくにつれ、平和に見えていた田舎町の住民がこぞって「秘密」を抱えていることがわかり……!?
『ツイン・ピークス』の物語には、ローラの殺人事件の他にも、たくさんの謎があった。だが、そのうちのかなりの数の謎は、きちんとした形で解き明かされることは最後までなかった――というのも、ストーリーの方向性をめぐる行き違いなどの理由から、ドラマ自体がわずか2シーズンで強引に終了してしまったからだ。
92年に「すべての謎が明らかに!」との触れ込みで公開された映画『ツイン・ピークス/ローラ・パーマー最期の7日間』も、むしろ、ファンの頭をますます混乱させただけだった。
そして、あれから25年――。
2.旧シリーズと新シリーズは、どう繋がっているのか?
今回の『The Return』の物語は、旧シリーズのシーズン2最終話から「25年後」という設定で始まる。旧シリーズの放映終了年は1991年だったから、現実の世界では、この間に「26年」の年月が経過していることになる――約1年の誤差はあるけど、両者の時の流れは「ほぼ同じ」と考えていいだろう。
ちなみに、そのシーズン2最終話のブラック・ロッジでのシーンで、ローラ・パーマーがクーパー捜査官に「25年後に会いましょう」と、こっそり囁いたことを覚えているだろうか?
この数字の一致は、ただの偶然なのだろうか? それとも、あの彼女のセリフはすべてが計算済みの「予言」だったのか!?
3.25年後のクーパー捜査官は、今でもドーナッツ好きなのか?
かつての『ツイン・ピークス』で「謎解き探偵」役を務めていたのは、おいしいコーヒーとドーナッツが大好きなクーパー捜査官(カイル・マクラクラン)。
シャーロック・ホームズにも負けないほど頭脳明晰だけど、すべての言動がいちいち「おちゃめ」な彼の存在は、多くの人々が『ツイン・ピークス』にハマった理由のひとつだった――もっとはっきり言えば、僕らはみんな、クーパー捜査官に恋していたのだ。
今回の『The Return』にも、もちろんクーパーは帰ってくる。しかし、ひとつ大事なことを思い出してほしい――旧シリーズのシーズン2最終話で、クーパーは“謎の男”ボブに魂を乗っ取られ、「向こう側の世界(まぁ、解釈はいろいろあるだろうけど!)」に置き去りにされたはずだ。
あれから25年が経った現在、クーパーは無事に現実の世界で生きているのか? もしそうだとしたら、あの事件の影響は、彼の中にどんな形で残っているのか? そして、今度こそ本当に「ダイアン」の正体は教えてもらえるのか? どうなんだい、ダイアン??
4.懐かしのキャストは、どれだけ戻ってくるの?
今回の新シリーズに登場するキャラクターの総数は「217人」。言うまでもないことだけど、全18話のTVシリーズとしては、これは「異常なまでに多い」数だ。
クーパー捜査官にくわえ、今回の新シリーズには、多くの懐かしい顔ぶれ――数にすると30人以上――が戻ってくる。たとえば、色気ありすぎの女子高生だったオードリー(シェリリン・フェン)。
ダブルRダイナーのオーナーだったノーマ(ペギー・リプトン)と、美人ウェイトレスのシェリー(メッチェン・アミック)。
黒い眼帯をしたネイディーン(ウェンディ・ロビー)と、その夫で、ノーマと浮気していたエド(エヴェレット・マッギル)。
ローラの父親(にして、シーズン2で死んだはずの!)のリーランド(レイ・ワイズ)。ローラの秘密の恋人だったジェームズ(ジェームズ・マーシャル)などなど――ただし、彼らが今回の物語に「どの程度」がっつり絡んでくるのかは、現時点ではまったく不明だ。
諸事情により、今回の新シリーズには戻ってこなかった俳優もいる。ドナ役のララ・フリン・ボイル、アニー役のヘザー・グラハム、トルーマン保安官役のマイケル・オントキーンなどなど……。
仕方のないことだけど、新たに始まる物語が彼らの「不在」をいかにカバーしているのかは、気になるところ。代役が当てられているのか? それとも「黒歴史」的に、最初からいなかったことになってるのか!?
25年の間には、亡くなってしまった俳優もいる。中でも、映画版にジェフリーズ捜査官役で出演していたデヴィッド・ボウイがいないのは、本当に残念すぎ……。
予言が得意なマーガレット役の女優、キャサリン・E・コールソンも2015年9月に他界したが、彼女の出演シーンはギリギリのタイミングで撮影することができた。「丸太おばさん」の最期の名演技、ハンカチのご用意をお忘れなく。
5.豪華すぎる新参戦キャストには、「あのバンド」の「あの人」も!?
出演者「217人」の中には、旧シリーズには出演しておらず、今回の新シリーズでデビューとなる俳優もたくさんいる。そのリストには、誰もが知っている有名な映画俳優やミュージシャンも多数含まれている。
ざっと名前を上げていくと、ナオミ・ワッツ、ティム・ロス、モニカ・ベルッチ、マイケル・セラ、ジェニファー・ジェイソン・リー、アマンダ・サイフリッド、アシュレイ・ジャッド、パール・ジャムのエディ・ヴェダー(!)、ナイン・インチ・ネイルズのトレント・レズナー(!!)、ルース・ラデレット(クロマティックス)、シャロン・ヴァン・エッテン、スカイ・フェレイラなどなど……。
『ブルーベルベット』をはじめ、初期のリンチ映画の常連女優だったけど、なぜか『ツイン・ピークス』にだけは出ていなかったローラ・ダーンの初出演も、往年のファンにとっては嬉しいニュースだろう。
ただし、彼らがどんなキャラを演じるのかは、いっさい公表されていない。ひょっとしたら、何人かは重要な役かもしれないし、逆に、ほんの1シーンの「通行人」的な扱いの人もいるだろう。
ひょっとしたら、メイクや変装のせいで、どのシーンに出ていたのか、簡単には判別できないケースもあるかも。過去の例から言っても、デヴィッド・リンチの作品ではどんなことだってありえるのだ。
6. で、ローラ・パーマーを(本当の本当に)殺したのは、誰なのか?
途中からいろんな要素が加わりすぎて、もうすっかり忘れているかもしれないけど、『ツイン・ピークス』における「いちばん最初の謎」は、シンプルに「世界で一番美しい死体=ローラ・パーマーを殺したのは誰か?」だった。
その謎は、シーズン1の最終話で、一度はきれいに解決した(誰とは言わないけど、そう、あの人!)……というか、解決した「はず」だった。
今回の新シリーズには、ローラ・パーマー役(&いとこのマデリーンの一人二役)だったシェリル・リーの出演も決定している。しかし、ローラもマデリーンも、旧シリーズの中で、どちらも死んでいるキャラクターだ。
としたら、25歳分の年齢を重ねたシェリル・リーは、いったい何のためにシリーズに戻ってくるのか? 今回はまったく別の新しい役を演じるのか? それともひょっとして、ローラ・パーマーは、どこかの世界でまだ生きていて、年を重ねているのか!?……「世界で一番美しい死体」をめぐるミステリーは、まだまだ簡単には終わらない! のか? そういうことなのか??
7.あなたは付いてこられるか? 果汁濃度100%のリンチ・ワールド。
誰もが「デヴィッド・リンチの代表作」と認識している『ツイン・ピークス』だが、実は、旧シリーズの計2シーズンの中で、リンチが自ら監督を務めたエピソードは意外なほど少ない(全30話中、たった6話だけ)――各エピソードの完成度に関して言うと、旧シリーズは、いろんな点で「妥協の産物」でもあったわけだ。
しかし、今回の新シリーズは、なんと「全18話すべて」をリンチ本人が監督している。これはもはや、通常のTVシリーズではない――18編のパートに分かれた、1本の「巨大長編映画」なのだ。
最初の『ツイン・ピークス』以降――特に、最近作の『インランド・エンパイア』(06年)などにおいては――デヴィッド・リンチ監督の作風は、より挑戦的で、より実験的な方向へと「進化/深化」を遂げている。
そこでは、物語の構造の多層性も、時間の流れの直線性も、より複雑化/難解化が進んでいる。おそらく(というか、ほぼ間違いなく)今回の新シリーズも、その流れに沿った作品として仕上がってくるだろう。
言い換えると、今回の『The Return』に「わかりやすい解答」は期待しない方がよさそう!ということ……とは言え、具体的な謎解きの話を始めるのは、さすがにまだ2ヵ月早すぎる。なので、ひとまずは、この素敵な動画でもどうぞ。
なにはともあれ、お帰りなさい、ツイン・ピークス!
(内瀬戸久司)
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