テイラー・スウィフト、新境地の傑作『フォークロア』に続くサプライズ連作『エヴァーモア』にみなぎる驚異のクリエイティビティ。圧倒される!

テイラー・スウィフト、新境地の傑作『フォークロア』に続くサプライズ連作『エヴァーモア』にみなぎる驚異のクリエイティビティ。圧倒される!

2020年のテイラーには本当に驚かされっぱなしだ。パンデミックの最中に人知れず制作し、サプライズ・リリースした傑作『フォークロア』から半年と経たないうちに、またしても凄いアルバムを突然届けてくれたのだから。


テイラー・スウィフトの5ヶ月ぶりのニュー・アルバム『エヴァーモア』は、前作『フォークロア』の姉妹作、連作として制作された。とは言えさすがに急作りのアルバムゆえ『フォークロア』のアウトテイク集かおまけのような内容かと思いきや、おまけどころか『フォークロア』に匹敵する、いや、むしろ凌駕するほどの内容の濃さなのだから驚異なのだ。

テイラーは本作について「簡単に言うと、曲を書くのが止められなかった」のだとコメントしている。

『エヴァーモア』は『フォークロア』で芽生えたテイラーのフィクショナルな物語の語り部としての欲求がさらに高まった作品であり、前作以上に自由奔放に想像力の翼をバッサバサと広げているアルバムだ。『フォークロア』で足を踏み入れた森のさらに深い場所で、神秘と幻想と御伽のイメージを鮮やかに交錯させた “willow”のミュージック・ビデオにも、それは顕著だ。


丁寧に織り込まれたチェンバー・ポップの側面が際立っていた『フォークロア』と比較すると、一聴して本作はより緩やかな起伏で繋がれたオーガニックなサウンドで、聴きこめば聴きこむほどそのリッチなテクスチャーに気づかずにはいられないはず。

レコーディングには前作から引き続きアーロン・デスナー、ジャック・アントノフ、ボン・イヴェールが参加。さらにハイムとコラボした"no body, no crime"や、ザ・ナショナルとの共作曲"coney island"など、さらに豪華な布陣が敷かれている。


ロックダウン中にテイラーの一人遊びとして始まった『フォークロア』プロジェクトは、本作に至ってさらに多くの他者を森に誘い込んだ作品だと言える。

「夫とその愛人に殺されてしまう妻」というなんとも恐ろしい筋書きを秘めた"no body, no crime"を筆頭に、本作もまた多視点から紡がれていく作品であり、ハイム三姉妹やザ・ナショナルがそれらの物語の登場人物として「演じている」ように感じるのも、それだけこの『エヴァーモア』が奥行きのある世界だからだろう。


テイラーいわく「今年の冬のホリデーは多くの人にとって孤独な時期になると思うけれど、これは私からのプレゼント」だという『エヴァーモア』。クリスマスも新年も地味オブ地味なシーズンとして終わること必至のこの冬、確かに依然として続く巣ごもりの日々にこれほどぴったりのサウンドトラックはないだろう。(粉川しの)



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テイラー・スウィフト、新境地の傑作『フォークロア』に続くサプライズ連作『エヴァーモア』にみなぎる驚異のクリエイティビティ。圧倒される! - 『rockin'on』2021年1月号『rockin'on』2021年1月号
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