ずとまよの新作はNetflixで配信中のアニメ映画『雨を告げる漂流団地』の主題歌として書き下ろされた。洒脱なギターリフが貫くどこかノスタルジックなシティポップ感のあるサウンド。1行目の《助けたい表面 寂しさが少年》というライミングからしてずとまよ節炸裂。『雨を告げる漂流団地』は、幼馴染の少年少女を主人公にしたひと夏の冒険物語を描いた作品だが、ACAねはサビ前で思いっきり息を吸って《君の吸い込んだ空気で／消えてしまいそうです》と歌ったあと、とびきりのエモーションを込めて《君のSOSは 僕のものって 思い込んだ夏》と、当然のごとく世界に君と僕しかいないと思っていた季節がやがて終焉することを突きつける。歌い手として、ストーリーテラーとして、非常にシンプル且つ高次元なやり方で「僕」のままならない気持ちを瞬間的に聴き手とシェアする。ギター、ベース、ドラム、シンセ、ホーン……各々の楽器がテクニカルなプレイを見せ、超絶なグルーヴを築き上げていく中で、ACAねの歌がどんどんキャッチーさを際立たせていくというずとまよポップの革新性がこれだ。（小松香里）

『ROCKIN'ON JAPAN』11月号より