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ついつい何度もリピート再生し聴き入ってしまう、素晴らしい楽曲が届けられた。Netflix映画『余命一年の僕が、余命半年の君と出会った話。』の主題歌、suis from ヨルシカ歌唱による“若者のすべて”(言わずと知れたフジファブリックの名曲)カバーである。なお楽曲プロデュースは、映画本編の音楽も担当した亀田誠治によるもの。ヨルシカのコンセプチュアルな作風の中で輝くsuisの歌声はもちろん重要だけれども、ふわりと柔らかな響きをもたらしながらも芯の強い味わいを残してゆくその美声が、こうしてポップカルチャーのさまざまな場面で大きな需要を帯びてゆくさまが興味深い。つまり「放っておくことのできない才能」なのだ。で、志村正彦が遺していった名曲の数々も、大切な思い出の中で煌めくばかりではなく、やはり今を生きる人々にとって「放っておくことのできない才能」の結晶なのだと思う。命の瞬きである才能をカップリングし、新たな普遍性の形を提示してみせた手腕にも拍手を送りたい1曲だ。(小池宏和)(『ROCKIN'ON JAPAN』2024年8月号より抜粋)
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