ザ・キラーズが掴み取った本流

ザ・キラーズ『バトル・ボーン』
2012年09月19日発売
ALBUM
ザ・キラーズ バトル・ボーン
「オルタナティヴな気分」に酔っているうちは、現状の本流を脅かすような「自分自身の本流」を生み出すことは出来ない。00年代を通してロックが得た経験とは、第一にそれだった。80年代NW直系のサウンドを起点にしていたザ・キラーズの、とりわけブランドン・フラワーズの歌のスケール感というのは、まさに「自分自身の本流」という価値観を巡って居場所を求めるように旅してきた。メンバーのソロ活動を前提としたバンドの休止期間を経て約4年ぶりに放たれる新作で、彼らは完全に「オルタナティヴな気分」をかなぐり捨てている。凄いアルバムだ。

バンドが所有するスタジオの名前であり、何よりも「戦火の中に生まれた州」=故郷ネヴァダの州旗に記された言葉でもあるタイトル。冒頭の“フレッシュ・アンド・ボーン”と最後のアルバム表題曲でその主題に触れながら、「君と僕」の人生の物語をスプリングスティーン並の精度で綴り、ボノ並の歌声で描いてゆくブランドン。その歌詞を目で追い、魂で聴いて欲しい。この作品は必ず貴方に通じている。なぜなら、貴方の人生の本流もまた、貴方の足元から始まっているからだ。(小池宏和)
公式SNSアカウントをフォローする

人気記事

最新ブログ

フォローする