【インタビュー】終活クラブが全解説! 世の歪み、人生の葛藤、そして音楽の喜びを赤裸々に描いたメジャー1stアルバム『メジャーな音楽』について

【インタビュー】終活クラブが全解説! 世の歪み、人生の葛藤、そして音楽の喜びを赤裸々に描いたメジャー1stアルバム『メジャーな音楽』について
メジャーデビューから1年。終活クラブの待望のメジャー1stフルアルバムが完成した。その名も堂々『メジャーな音楽』。この作品には、終活クラブが「メジャーで鳴らす音楽とは?」というところに向き合い葛藤する過程と、そこで辿り着いたアンサーが示されている。人間はいつ死ぬかわからない。だからこそ誰しも人生の終活はすでに始まっているのだという、バンドが掲げるテーマにもより深く結びついた作品だと思う。そこまで踏み込むかと思う不穏な楽曲や、そこまで赤裸々に自身の懊悩を書き綴るかという歌まで、人生のすべてを曝け出すようなアルバムである。

今回は、音楽性の大きな広がりも感じさせるこの快作についてメンバーにじっくり語ってもらった。

インタビュー=杉浦美恵


僕の「インターネットやめたい遍歴」は、振り返れば小学生くらいから始まってたんですよね。“インターネットやめたい”は全部実話です(少年)

──まず、今年4月から3曲連続の新曲リリースがあって、その3曲がそれぞれに終活クラブの魅力と可能性を見せていましたよね。その一発目が “インターネットやめたい”でした。これは、まさに終活クラブらしい曲で、やめたいけどやめられないジレンマが切々と(笑)。めちゃめちゃ共感性高い曲だと思いました。

少年あああああ(Vo・G) もう、インターネットにうんざりしちゃってて(笑)。僕の「インターネットやめたい遍歴」は、振り返れば小学生くらいから始まってたんですよね。“インターネットやめたい”は全部実話です。PC買って怪しいサイト見て架空請求が来て、父親が「俺かもしんねえ」って払ってくれたっていうのも実話(笑)。だからこの曲がリリースされたことによって、父親は初めて知ったはずです。ああ、あれはおまえだったのかと。だからこの曲は父親への謝罪から始まってます。そして高校生の時には携帯電話を持って、2ちゃんねるとかを見るのにはまって、あいつらマジ口悪いから、それによって自分も口悪くなったりして、めちゃ嫌われたりもしたなあっていう。さらに今はバンドマンになり、こうやって活動していますけど、SNSでバズったもん勝ちみたいな世界があったりとか、そういうのに振り回されてるのも嫌だし……っていうのが詰め込まれた曲です(笑)。でもやめられないんだよなあ、みたいな。だって「インターネットやめたい」って書くのもインターネットなんだし。

──インターネットがなければ、この曲に辿り着かない人も多いわけで。

少年 そうなんですよね。みんなインターネットで出会ってくれているので。

──そういうパラドックスを孕んだ楽曲、テンさん(ファイヤー・バード)も共感する部分がありましたか?

ファイヤー・バード(Dr) いや、正直僕はこの歌詞にはまったく共感できなくて。僕はインターネットが得意じゃないので(笑)。だって、「掲示板見漁って罵詈雑言」とか、あんまりピンと来てないんですよ。

石栗(G) 2ちゃんねるとかも見てなかった?

ファイヤー・バード 見てないねー。この曲で唯一共感したところは、《研究によれば/現代で流行る曲に/ギターソロなんかいらない》ってところ。


石栗 そこなの(笑)?

ファイヤー・バード 僕はこの歌詞のあとにグリ(石栗)のギターが入ってきた時、これは天才だって思った。

──確かに《ギターソロなんかいらない》から続くギターソロは痛快でした。

石栗 最初に歌詞を頭から読んでたらそのくだりがあって、まあそうだよな、じゃあ今回の曲はギターソロないんだなって少し寂しく思ってたんですよ。でもデモを聴いたらちゃんと8小節、ギターソロを入れるであろう箇所が作ってあって。速攻でソロをつけて少年に送り返しました(笑)。

──ここ、ギターソロ来るのか来ないのかって、期待しちゃいますよね。

石栗 しかもちょっと食い気味に入ってますからね。ギターソロなんかいら「ない」のところで入っていく。ギタリストとしてはやっぱりギターソロがないと、武器が1個なくなったような寂しさがあるんですよ。ギターソロは終活クラブではすごく大事にしているものなので。

──羽茂さんはこの曲には共感しました?

羽茂さん(Key) この歌詞は僕こそ共感できるっていうか。インターネットについては常に嫌いになる一歩手前にいるので(笑)。昔、学生の頃に使っていたアカウントがあって、今はほとんど使ってないんだけど、少年は今でもそのアカウントをフォローしてて。いまだに「あの時のツイートが」とか言ってくるんですよ。インターネットってデジタルタトゥーなんですよ。自分でも、なんであの時こんなツイートしたんだろうって後悔するし、だからマジで僕からインターネット《取り上げて ねえ》なんです(笑)。

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恋とは、自分が恋していることに気づくことなんじゃないかと思って。違和感なくこの曲が書けたというのはかなりの成長だと思いました(少年)

──そして次にリリースされたのがまっすぐな“恋”だったので、驚いた人も多かったと思います。これまでラブソングや恋の歌がなかったわけじゃないけど、こんなにストレートに恋の歌を紡いだのは初なんじゃないかと。

少年 初ですね。「誰かの青春になりたい」って思ったんです。それこそ10代の頃って、部活か恋愛くらいしか楽しいことがなかったなあって思って。終活クラブは放っておくと人生ばっかり歌いますけど、あの頃のきらめきみたいなものを今一度書いておきたいなと思って、愛ではなく「恋」についてすごく考えたんです。それで、恋とは、自分が恋していることに気づくことなんじゃないかと思って。その過程みたいなものを曲に落とし込んだという感じですね。自分としても違和感なくこの曲が書けたというのはかなりの成長だと思いました。あと、木暮栄一さんにアレンジで入っていただいたことで曲が明るくなって、広がりが出たので、それがすごくありがたかったです。アレンジャーさんと一緒にやってみるというのも、自分たちにとっては目が開かれる思いでした。

石栗 最初はなんだか少年の曲じゃないような感じがしていたんですよ。こんな歌詞をおまえが書くのか?って思って。でもライブでやっていくうちに、この曲もどこかに少年のエッセンスが根強く残ってるんだよなって思うようになりました。

ファイヤー・バード 僕はむしろ、少年がようやく本音出してきたなって思った。だってここの《魔法だろうか》っていう歌詞とかさ、いっつも言ってるもんね。「魔法のようだね」って、昔からよく言ってる。それがここで活きてくるんやって思った。そういう、少年の恋の世界観が入っていたから、僕は違和感なく聴けて、これ、少年の、自分の恋愛じゃんって思っちゃった(笑)。


──その次の“幽霊”が個人的にすごく好きなんですけど、これは、友達なのか恋人なのか、あるいは青春の大事な時間そのもののことなのか、ふと気づくと、いつの間にか失ってしまっていたもののことを歌っている気がして、夏の歌として、すごく切なくて儚くてあたたかい曲だなと。

少年 嬉しいです。僕、部屋に風鈴を吊るしているんですけど、それをチリンと鳴らした時に、夏が呼んでるみたいな気持ちになって、そこから曲を書き始めたんです。友達なのか恋人なのか、家族なのか、あえてその対象のイメージがつかないように書こうと意識しました。自分が夏に感じる抽象的なものを歌詞にちりばめることで、聴いた人がそれぞれに解釈して自分のものにしてくれんじゃないかという思いから。

──聴き手のイマジネーションによって物語が完成するというか。そういう書き方は、メジャーデビューをして多くの人に曲を聴いてもらうというところで、より意識するようになりましたか?

少年 今までもそういう書き方はしてきていたんですよ。これまでそういう部分をフィーチャーするタイミングがなかったので、連続リリースのタイミングで自分が得意としている書き方を見てもらいたくて。

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──それで、今回のアルバムではその“幽霊”の前に“足りない”という曲が入ってくるんですけど、これがすごく「効いて」いる気がしたんです。“幽霊”で描いているものと地続きにあるような気がして。

少年 そうですね。これもわざと言葉足らずで書いていて。だから最後の《ことばが足りない》っていう歌詞につながるんですけど、いったい何が足りないのかわからないような書き方をしています。ただそれはお金で買えるものじゃないはずだから、《胸ポケットの小銭じゃ足りない》っていう歌詞は書いておきたくて。あとは、自分が足りないと思っているものって、みんな何かしらあると思うので、それぞれがそれを思いながら聴いてもらえたらなって。

羽茂 確かに、わざと足りないような感じで書いてるよね。この“足りない”から“幽霊”の流れはきれいだなあって思います。

石栗 この2曲に関しては、歌だけで見えてくる情景が大きいというか。なので、ギターはできるだけ歌に寄り添いたいという思いでアレンジしましたね。これが『ハイパー005』をリリースした頃までの自分だったら、ギターでさらに物語を補完しようとしたり、逆にギターだけで物語が浮かぶように、もっと前に出たりしてたと思うんですけど、この2曲は特に少年が作ったストーリーに寄り添えたなって思います。

ファイヤー・バード “幽霊”はドラムも基本的にフィルがあまりなくて、ボーカルを聴かせるようにしてるんですけど、逆に“足りない”は意外とドラムとしては展開が多くて。展開多い曲なのに、ここまで歌が心に入ってくるかねっていう。手数が多いにもかかわらず、すごい耳に残るし、僕はこの12曲の中でいちばん好きですね。僕が普段あまりやらないようなフレーズやアクセントが“足りない”には入っていて、それも込みで好きです。

少年 アルバム候補曲をすべて出した時点で、テンは間違いなくこの曲がいちばん好きだろうなとは思っていたよ。

ファイヤー・バード そうなんだ(笑)。

少年 うん。短い付き合いじゃないんで(笑)。こいつはもう、こういうのがほんと好きなんですよ。

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次のページ自分が曲の中で伝えたいのは「ずっと味方でいるよ」っていう、ただそれだけだなっていうところに辿り着いたんです(少年)
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