ずっと真夜中でいいのに。/TSUTAYA O-EAST

ずっと真夜中でいいのに。/TSUTAYA O-EAST - All photo by 鳥居洋介All photo by 鳥居洋介
2018年、彗星の如くネットシーンから飛び出してきたアーティスト、「ずっと真夜中でいいのに。」。YouTubeに投稿された4曲のMVの総再生回数はすでに4000万回を超えている。しかも一番古い曲ですら1年経っていない。顔も容姿の全貌も明らかにせず、楽曲だけでここまでの注目を集められるのは、偏に、楽曲そのものが素晴らしく、聴く人誰もがその魅力に心を打たれているからに他ならない、という証明だと思う。
4月12日、TSUTAYA O-EASTにて開催された、東名阪ツアー「1st LIVE~まだまだ偽りでありんす。~」ファイナル公演は、そのことを心底感じたとともに、音楽、それを生み出すアーティストという意味を改めて考えさせられるライブだった。

ステージ上に組まれたセットは、1月のライブ同様、むき出しの配管や時計、キッチン道具などが飾られていて、現実味のある道具が普段見ないような配置で装飾されていることで、異世界にいるかのような感覚になる。
会場BGMが止むと、“秒針を噛む”のMVがスクリーンで流れ出し、待ちきれない観客のボルテージが高まる。そしてガラスの割れる音の後、「お手元のメガネをおかけください」というアナウンス。観客の視界を遮ったところで、ステージにACAねをはじめとしたバンドメンバーが登場、“秒針を噛む”でライブがスタートする。1コーラス歌唱の後、メガネを外してもいいというACAねからの号令にも似た言葉を受け、メガネを取った観客たちは、目の前にいるずっと真夜中でいいのに。(以下、ずとまよ)の存在を実感し昂っているのがわかる。画面越し、イヤホン越しに感じていた存在感が、有機的な説得力を増し、熱を持ってそこに在ることにこんなに意味を持つのかと改めて感じる。

間髪入れずに“ヒューマノイド”と、速いテンポの曲を挨拶代わりの如く披露すると、会場を見回し、初めてのツアーファイナルに大勢の人が集まってくれたことへの感謝の一言。
そして、アップテンポなジャズ要素を含んだ“ハゼ馳せる果てるまで”で一気に大人っぽい歌声を披露したり、異国風なリズムで踊りたくなるような“フルムーンダンシング”では、はたまた力強い歌声を響かせるなど、曲ごとにくるくる変わるACAねの表現力にのめり込んでいく。

続いて、バラードナンバー“Dear. Mr. F”をしっとりしたピアノに乗せて歌い上げ、心の叫びや溢れる想いをそのまま表現するような歌声に、聴いているこちらも胸が締め付けられるようで、その渾身の歌声を聴きこぼさないように全身で聴き入ってしまう。
そして、ACAねがフライパンとおたまを手にし、ほんわかな雰囲気に包まれた“雲丹と栗”では、キッチン道具を持参している観客もいて、楽しく和んだ空間に。この空間は、ずとまよのライブでしか味わえないだろう。

ずっと真夜中でいいのに。/TSUTAYA O-EAST

後半は、最新曲“眩しいDNAだけ”から、憂いを含んだ歌声や感情豊かな歌声を次々に披露。その感情の振り幅に、一人の人間のリアルな心の揺れ動きと、逆に一人の表現者とは思えない様々な色の表情を見ているように感じるほどだ。

本編最後には“脳裏上のクラッカー”を、今日のライブでの幸福感を伝えるように、全身を使って歌い上げる。驚くのはその驚異的な歌声だ。本編最後にもかかわらず、高く突き抜ける伸びやかな歌声を披露する彼女に、感嘆のため息を漏らしてしまった。

アンコールで再登場すると、最後に観客に一緒に歌うよう促し、“秒針を噛む”をファンとともに歌い上げた。
ACAねが去っても歓声や拍手は止まず、ずとまよと観客によって生まれた多幸感が、会場に満ち溢れているのがわかった。

ずとまよの楽曲は、どれも感情豊かで、歌詞を見るとその情報量に驚く。しかし、人間の心や感情というものは、簡潔に表現することは難しく、飾らない言葉で、黒い感情も含みながら、キャパシティ限界まで詰まっているのが本当だと思う。それを体現しているから、聴く人も心を露わにされ、そこに浸透し、深く刺さって、その魅力にはまってしまうのだと、ライブを観て改めて感じた。

ずっと真夜中でいいのに。/TSUTAYA O-EAST

今の時代の音楽の良いところを吸収し、自由に昇華して表現するずとまよは、平成から令和へ時代を跨ぐアーティストの象徴と言えるだろう。6月には2ndミニアルバムリリース、8月の2daysライブも発表された。さらに、7月には「FUJI ROCK FESTIVAL '19」への出演も決定している。
ずとまよは今後も、自由にありのままに、型に囚われない音楽を私たちに届けてくれると思う。そこには、音楽とアーティストの在り方すら超えるものがあると確信できるものがある、そう言っても過言ではないと思うから、ずとまよから発信されるもの全てが、今後もとても楽しみで仕方がないのだ。(中川志織)
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