9mm Parabellum Bullet/Zepp Tokyo

9mm Parabellum Bullet/Zepp Tokyo - All Photo by 石崎祥子All Photo by 石崎祥子

●セットリスト
01.DEEP BLUE
02.名もなきヒーロー
03.The Revolutionary
04.太陽が欲しいだけ
05.Getting Better
06.Scarlet Shoes
07.反逆のマーチ
08.The Revenge of Surf Queen
09.Beautiful Dreamer
10.君は桜
11.Calm down
12.Ice Cream
13.夏が続くから
14.Mantra
15.ロング・グッドバイ
16.Black Market Blues
17.新しい光
18.キャリーオン

9mm Parabellum Bullet/Zepp Tokyo

「みんな『DEEP BLUE』はたらふく聴いてきたよね? でも今日は、みんなに実際に青く染まってもらいますから!」と意気揚々と呼びかける菅原卓郎(Vo・G)の言葉に、序盤から熱気渦巻くフロアが大歓声に包まれる。そして、「準備はいいか東京? 本当に? もっとよくなるんじゃねえの? 行けるかー!」の卓郎の絶叫とともに、Zepp Tokyoはさらなる灼熱のロック祝祭空間へと塗り替わっていく――。

9mm Parabellum Bullet/Zepp Tokyo

2004年の結成から今年で15周年を迎えた9mm Parabellum Bullet。「9の日」こと9月9日に発売された最新8thアルバム『DEEP BLUE』を携え、全国9都市・10公演にわたって開催してきた全国ツアー「FEEL THE DEEP BLUE TOUR 2019」も、東京・Zepp Tokyo公演の2日目でいよいよツアーファイナル。
前作のアルバム『BABEL』での威風堂々の重轟音メタル感とは一転、しなやかな躍動感に満ちた歌とアンサンブルを聴かせた『DEEP BLUE』のモードで9mmの音楽世界を丸ごとアップデートしてみせた、画期的な名演だった。

9mm Parabellum Bullet/Zepp Tokyo

菅原卓郎/滝善充(G)/中村和彦(B)/かみじょうちひろ(Dr)、そしてツアー全10公演ともサポートギタリストとして参加したfolca・爲川裕也の5人編成でステージに登場。タイトなビートと滝・卓郎・爲川のトリプルギター越しに繰り出される表題曲“DEEP BLUE”のミステリアスな響きが、観る者すべてを開演早々から「9mm新次元」へと導いていく。
そして、間髪入れずにシングル曲“名もなきヒーロー”へ流れ込み、会場一面のOiコールとクラップを巻き起こしてみせる。《勝ち目が見当たらなくたって/逃げたくないから笑ってんだろ》という卓郎のアグレッシブなボーカルでオーディエンスの魂とギアを合わせて、《また明日 生きのびて会いましょう》と新たな闘いへとダイナミックに駆り立てる――9mmならではの時代への渾身のエールが、突き抜けるような高揚感とともにZepp Tokyoを震わせていく。

9mm Parabellum Bullet/Zepp Tokyo

その後も“Getting Better”など『DEEP BLUE』の楽曲をライブの主軸に据えつつも、“The Revolutionary”、“太陽が欲しいだけ”といった各時代のマスターピースを盛り込んでいたこの日のアクト。紅蓮のラテン熱狂空間を描き出した“Scarlet Shoes”〜“反逆のマーチ”の流れにも、サーフロック調インストナンバー“The Revenge of Surf Queen”も、イントロが鳴った瞬間に驚きと喜びの声がフロアの方々で上がっていたのが印象的だった。

9mm Parabellum Bullet/Zepp Tokyo

深い海をたゆたうような美しいアルペジオの響きの中、「周りのことなんか気にせずに、もっともっと『DEEP BLUE』の世界に浸ってください」という卓郎の言葉と“Beautiful Dreamer”の滝&爲川のスリリングなリードフレーズをきっかけに、ライブはさらに『DEEP BLUE』の核心へと迫っていく。
「東京! 踊ってくれ!」の卓郎のコールとともに放った“君は桜”の雄大なメロディが、和彦&かみじょうの強靭なビート感と渾然一体となってフロアを心地好く揺らしたところで、卓郎が一時退場。4人で奏でた“Calm down”と題されたインストオルタナバラードが、轟々と燃え盛る熾烈な音像へと姿を変え、オーディエンスを戦慄と感激で包んでみせる。そして、ミディアムテンポのリズムとディストーションサウンドのドラマ性が、妖しくも雄大なイメージを想起させる“Ice Cream”へ――。

9mm Parabellum Bullet/Zepp Tokyo

全編が衝撃的瞬間のようなライブのカタルシスはそのままに、最終兵器的な滝のディストーションサウンドもかみじょうのツーバスのドラミングも含め、ライブを通して巨大な緩急のうねりを描き出してみせた9mm。歌とアンサンブルを全身で呼吸するような伸びやかなバイタリティは、まさに今の9mmならではのものだ。
卓郎がアコースティックギター、滝がエレガット(ナイロン弦のエレクトリックギター)に持ち替えての“夏が続くから”も「アコースティックパート」ではなく「真っ向勝負の見せ場」として鮮やかに体現してみせた9mm。ソロパートでエレガットをひずませた音色で滑らかなフレーズを披露する滝の姿には、不屈の音楽的好奇心と沸き立つ貪欲さが色濃く滲んでいた。

9mm Parabellum Bullet/Zepp Tokyo

「一生青春とは、ずっとはしゃいでることではなく、青を塗り重ねて、深い青色になっていくこと」……『DEEP BLUE』パッケージのステッカーに記されていたそんな言葉について、卓郎は後半のMCで改めて語っていた。
「憂鬱の青だとか、赤とか黄色とかいろんな色を塗り重ねていって、それでも真っ黒じゃなくて『深い青色』でずっといることができたら、一生青春って言えるんじゃないかなって。それって、ロックバンドをやることにもつながるなと思って。きっと、みんなの人生にも寄り添ってくれる言葉なんじゃないかと思うんで」
さらに続けて「一生青春ってしっくりこないなあと思ってたんだけど。そっか、『DEEP BLUE』になればいいんだ、と思った時に――もう一生青春できると思いました、俺は。みんなにも付き合ってもらいますけどね?」と観客に呼びかける卓郎に応えて、熱い歓声と拍手が広がる。

9mm Parabellum Bullet/Zepp Tokyo

激走絶叫ショートチューン“Mantra”からライブは怒濤の終盤へ! 滝の華麗なタッピングと超速ブラストビートが冴え渡った“ロング・グッドバイ”。一面のシンガロングとジャンプがフロアをでっかく揺らした“Black Market Blues”。『DEEP BLUE』感あふれる静謐なギター音色のイントロからエモーショナルな絶景を生み出した“新しい光”。そして、「声を聞かせてくれ!」の卓郎の晴れやかな叫びが圧巻の歌声を呼び起こした“キャリーオン”……自らの15年史のすべてに新たな息吹を吹き込むような、最高の一夜だった。

9mm Parabellum Bullet/Zepp Tokyo

2020年3月17日にはLINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)にて自主企画=「カオスの百年 vol.13」の開催も決定している9mm。その終わりなき進化の現在地を彼らは、エモーショナルな戦闘態勢の極致ではなく「バンドの自然体」として体現してみせた。そこに何より、今の9mmの逞しさと凄味を感じた。(高橋智樹)

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