Fear, and Loathing in Las Vegas @ ZEPP TOKYO

Fear, and Loathing in Las Vegas @ ZEPP TOKYO
Short Tour 2013

東名阪を廻る『Short Tour 2013』の初日となったZEPP TOKYO。会場は隙間なく埋め尽くされており、その殆どが若いキッズたち。たちこめるエネルギーも半端ではない。客電が落ちた瞬間から、「ウォー!」を越えた「グォー!」とでも言うような歓声が巻き起こる。そんな状況の中、まずステージに現れたのは、ゲストのYMCK。メンバーの除村武志が自ら説明してくれたけれど、今回のラスベガスのツアーは「興味があるけど、普段は呼ばないようなゲストを呼ぼう」というコンセプトだったそうで、恐らくオーディエンスとしても、YMCKのようなテクノポップを浴びたことのない人が多いように見受けられた。しかもファミコン世代の心を掴む映像と音色が武器の彼ら、この年齢層に伝わるのかな?……と心配していたが、そこは楽しむことに貪欲なキッズたち。メンバーの名を呼んだり、ハンドクラップしたり、自分たち流の盛り上がりを見せる。その様子にメンバーも、自分たちを笑顔で貫くパフォーマンスを展開していた。

その後も会場内の温度は高まっていく一方。転換中に、バンドロゴが映し出されただけで「グォー!」という歓声、そしてハンドクラップが起こる。これはライヴがはじまったらどうなってしまうんだ!?とドキドキしていると、客電が落ち、レーザー光線が飛び交う。そこにメンバーが飛び出してきて、Soが「行こうぜ東京!」とハイトーン・ヴォイスで開幕宣言。そして、めまぐるしい時間が過ぎていった。まず、誰ひとり大人しいメンバーがいない。ハンドマイクのSoだけではなく、Minamiもキーボードを弾かない隙さえあれば、ガンガン動き回る。さらにSxun(G)、Taiki(G)、Mashu(B)の弦楽器隊は、鮮やかに上手に下手に走る。トドメにTomonori(Dr)も椅子に立ったりスティックを突き上げたり、全員攻撃態勢なのだ。ライヴハウスから階段を上ってきたバンドながら、まるでスタジアム・バンド顔負けのパフォーマンスである。さらに音も、思いっきりブ厚い。数年前に見た時は、オートチューンが掛かったヴォーカルと、レイヴ感あるシンセ・サウンドという上モノの軽さや、美メロもスクリーモもあらゆるものが詰め込まれたアレンジ故に、土台がしっかりしていないと難しいと思ったのだが、今は全てをひっくるめて、強固に鳴らし切っている。これは、レーザーも含めた照明などの演出も、やり甲斐があるだろう。そしてオーディエンスは、そんな一挙手一投足一音に対して、終始手を挙げ、歌い、フロアの後方までダイヴを起こすのだ。というわけで、目にも耳にもド派手な瞬間しかなく、喩えるとしたら、フルコースで肉しか出てこないような感じ。しかし、メンバーは味付けを変えながら肉を料理し続け、オーディエンスはそれをパクパクと食らう。今の若い世代のど真ん中ってこういう音楽だよな、と思わせられるような、パワフルでタフな光景だった。さらに、セットリストは、ツアー中なので詳細は掲載できないが、新旧ラスベガスが取り入れられたベスト的な内容。それもあって、さらに彼らの濃さをストレートに感じることができた。

さらにラスベガスと言えば、メディアにあまり出ないバンドだが、そこについてのスタンスも、ライヴからは感じることができた。まず、SxunのMCには無駄話が一切ない。ペットボトルが飛んできたことについて「みんなの力がないと、ライヴは成功しないからね」と諭した場面や、終盤の「振り返る時期でもないんですけど、凄いたくさんの人が関わっているから、ライヴができると思います。音楽で、どんどん返していこうと思います」という言葉からは、ZEPPという大きなハコを即完売させられるバンドに成長した今も、自分たちが鳴らす音楽と目に見える人だけを見詰めながら活動していこうとしている気概が受け取れた。いつか、広い場所に船出する機会を伺っているのかもしれないけれど……その時は、思いっきり海外にまで出ていってしまう可能性もあり得るはず。

誰も息切れしないまま突っ走っていき、ジャンプしまくりの“Jump Around”、Minamiがフロアに飛び込んだ“Love at First Sight”、青い光の中で手の波が揺れた“Twilight”など、クライマックスに次ぐクライマックス。Sxunが「今日も俺らはアンコールを用意していません。残っている体力、気力、絶対に、絶対に、出し切って下さい!」と叫んで突入した大ラスの2曲で、その言葉の通りの大団円を迎えた。MCでも告知されていたが、6月に彼ら初の映像作品であるDVD/Blu-Rayがリリースされるという。今、どんなバンド?と思われている筆頭であろう彼らを知るヒントが、大いにパッケージされているはず。もちろん、現場でも構わない。たくさんの人に、ライヴで築き上げられてきた彼らの真髄を感じて欲しいと思う。(高橋美穂)
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