LMYK、時空さえも越えて人々を魅了する才媛

LMYK、時空さえも越えて人々を魅了する才媛
『ROCKIN'ON JAPAN』最新号(2021年11月号)New Comerより

この7月からオンエアされていたTVアニメ『ヴァニタスの手記(カルテ)』。その第1クールエンディングテーマとして聴こえていたのが、気鋭のシンガー・LMYKによる“0 (zero)”だ。儚さと芯の強さを兼ね備えたそのハスキーな美声に、一発で虜となったリスナーも多いだろう。ドイツ人の父と日本人の母のもとに生まれ日本で育ったLMYKは、ニューヨークの大学在学中に音楽活動を開始。2020年11月にシングル『Unity』(映画『羅小黒戦記 ぼくが選ぶ未来』日本語吹替版主題歌)でデビューを果たした。『0 (zero)』は、2作目のシングル作品となる。

当初は弾き語りスタイルのシンガーソングライターとして音楽活動に臨んでいたLMYKだが、今日では極めて現代的なサウンドプロダクションのもとにアレンジされた楽曲を制作しており、コンテンポラリーなビート感やエレクトロニックサウンドを備えながらも、作曲や歌唱は非常にオーガニックな手応えを残すという独自のバランスを成立させている。日本語と英語の歌詞がないまぜになった“0 (zero)”は、前面に太いベースやビートがせり出してきたかと思えば、2コーラス目ではそれらが後退して壮麗なストリングスが立ち上がってくるといったふうに、めまぐるしい展開の中でLMYKの歌が一本の筋を通す構成になっている。移ろいやすい流行り廃りの中、LMYKのソングライティングと歌声は、ありとあらゆるルールやカテゴリー、そして時空までも越えて自由に飛び回る強靭な普遍性を感じさせているのだ。

“0 (zero)”をプロデュースしているのは、1980年代からジャネット・ジャクソンマライア・キャリー宇多田ヒカルらの作品を手掛けてきた大物ヒットメーカー=ジャム&ルイス。アレンジ面では、同じプロダクション所属のジョン・ジャクソンによる功績も大きい気がするが、LMYKの音楽に触れたジャム&ルイスは自らプロデュースに名乗りを上げたそうだ。マジかよ。早くも伝説のボスキャラを引っ張り出してしまうLMYKは、まさに時空を越えて触れる者を魅了するアーティストだ。(小池宏和)




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