『ROCKIN'ON JAPAN』最新号(2023年7月号)New Comerより
平坦に見える日常にも、心を揺さぶる変化は絶え間なく訪れる。それは、tonunがこれまでに発表してきた作品群のアートワークに描かれた、トワイライトのような淡い色彩のグラデーションになぞらえることもできるだろう。あなたの毎日に、胸の奥底から湧き上がるソウルはあるか。美しいグラデーションのような変化はあるか。tonunが甘くグルーヴィーに奏でるラブソングたちは、そして歌声は、いつでもそんなふうに問いかけてくる。
広島出身のシンガーソングライターであるtonunは、2023年現在のシーンにあって、最も勢いよくその知名度を高めているアーティストのひとりだろう。僕がその名を初めて意識したのは2022年初頭、「Spotify RADAR: Early Noise」に選出された時だが、2020年秋にDTM制作の“最後の恋のMagic”で活動を開始したtonunは、その時点で既に優れてキャッチーなソングライティング能力とハスキーな美声を持ち味にしていた。インディーズで3作のEPを発表したのち、この2023年にメジャーデビュー。6月14日に初のフルアルバムとなる『Intro』がリリースされる。各ラジオ局で猛プッシュされた、心ごと踊らせるディスコポップ“Friday Night”などのデジタルシングルを含め全10曲を収録している。
ソウルやジャズ、ヒップホップへの愛を前面に押し出しながらも、tonunの音楽性は多彩だ。珠玉の切ないバラード“嘘寝”や、ニュー・ジャック・スウィングとトラップが融合したユニークな曲調の“rendez-vous”、ジャジーR&Bの“eyes”など、借り物ではないさまざまな楽曲を通じて滲み出るものこそがtonunのソウルだ、と言わんばかりの主張を感じる。盟友サウンドプロデューサーのknoakほか盤石の演奏陣も、これが本当にデビューアルバムなのか、と溜め息が漏れるほどのクオリティを支えている。6月24日にはZepp Shinjukuでリリース記念を開催するほか、夏にかけての各地大型フェスでも引っ張りだこ状態に。ラブソングで滑らかな視界の変化を描き出すtonunと、ぜひ出会ってほしい。(小池宏和)
(『ROCKIN'ON JAPAN』2023年7月号より)
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tonun、滑らかに視界を変えてゆく魔法のソウル
2023.06.07 12:00