次世代バンドシーンに彗星のごとく現れたシャイトープ。2022年6月に大学時代の仲間で結成され、同年10月のサーキットイベントでのライブパフォーマンスが話題になり、11月にMVが公開された“部屋”がじわじわと浸透。翌年4月リリースの“ランデヴー”がバイラルチャートで1位を獲得してからのことは知っての通りだ。好きなことをやって音楽作って、何を言われても何が起こっても、このテーブルを囲むのは俺たちだから。
ロックバンドって、ただそれだけなんです
インディーズながらストリーミング1億回再生を記録した異例のバンドは、満を持してリリースする1stフルアルバムに『オードブル』と名づけた。バイラルヒットした“ランデヴー”、“部屋”、“pink”といった既存曲に加え、新曲5曲を収録。“ランデヴー”に匹敵する名バラード“天使にさよなら”に、ロックの衝動を高らかにかき鳴らす“Begin Again”、ミドルテンポの魔法がかけられたポップソング“sunny”──全曲どう聴いてもメインディッシュでしかないこのアルバムは、彼らにとってはなんと「前菜(=オードブル)」らしい。
シャイトープの歌に紡がれるのは、退屈な毎日から一歩踏み出すための小さな勇気、どうしようもなく絡まった赤い糸の切れ目。夜と朝が交わるほんの一瞬、季節の変わり目のセンチメンタル、鼻先を突き刺す夜の澄んだ空気──そのすべてが瞬間冷却された記憶のタイムカプセルである彼らの楽曲は、僕ら一人ひとりの思い出にも等しくアクセスし、多くの共感を生む。透明な歌の輪郭を縁取る声、ギター、ベース、ドラムには確かな体温があり、僕らの日々にある喜びも悲しみも強く抱き締めてくれる。彼らの音楽に血を通わせているのは何か。それは「ロックバンド」の心臓である。バイラルチャート席巻、テレビ出演、超満員のフェスステージ──そこに渦巻く期待や羨望や重圧に揺るがされることなく、3人でいること、バンドでいることがすべてだと言う。その姿はただただ眩しく、頼もしい。
ありとあらゆる感情の色に染まる全14曲の『オードブル』。このインタビューに綴られたシャイトープの決意とともに、心ゆくまで味わってほしい。
インタビュー=畑雄介 撮影=軍司拓実
(『ROCKIN'ON JAPAN』2024年3月号より抜粋)
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