毎年、季節が冬に変わる頃になると世の中には数多の煌びやかな冬の歌やクリスマスソングが世に放たれるわけだが、昨年の11月、東京を拠点に活動する若き3ピースバンド、berry meetがリリースした冬の曲“月が綺麗だって”はこんな歌い出しで始まっていた──《最近の冬は 無理⽮理のロマンチックが/そこら中にあって 息が詰まるけど》。メロディアスなサウンドに乗せて歌われるのは、煌びやかな装飾から目を背け、孤独に愛を模索するひとりの人間の姿だ。そこには切実さと孤独と痛みがあって、それがこの曲を他の数多の冬のラブソングとは違う特別なものにしていた。
berry meetは2022年の7月に結成された、たく(G・Vo)、たなかり(B)、いこたん(D・Cho)から成るバンドである。1stシングルとしてリリースされた“あのさ”は、生々しい楽器の響き、アンサンブルやコーラスの繊細さが素晴らしく、バンドの初作にして名曲。早くもバンドの代表曲になっている。その精緻でありながら虚飾のないサウンドに呼応するように、歌詞においても、人と人の狭間ですれ違う言葉と心の奥から、純粋さと「本当のこと」を見出そうとするバンドの姿が見えてくる。《何も混ぜないで 変に象どらないで》──穏やかで柔らかな、生きもののようなサウンドに乗せて聴こえてくるそんな静かな叫びは、この世界に向けられたもののようにも聴こえる。
飾り立てた言葉はいらない。僕らの本当の心はどこにある?──そんな純粋さへの希求こそが、berry meetの音楽の根幹にあるもの、と言えるのかもしれない。1月31日にリリースされる1stミニアルバム『夢の中で、夢から醒めて』には、初期衝動と、悲しみと、「どう生きればいい?」という問いと、願いが詰め込まれている。“煌めき”で彼らはこう歌う。《忘れない 変わらない 僕を愛したい/飾らないままで 僕を⽣きていく》。過剰なものや派手なものに目を奪われ、本当に大切なことを忘れてしまわないように、berry meetの音楽は響いている。
文=天野史彬
(『ROCKIN'ON JAPAN』2024年3月号より抜粋)
『ROCKIN'ON JAPAN』3月号のご購入はこちら
【JAPAN最新号】berry meet、本当の心を求めて奏でるアンサンブル
2024.02.06 12:00