なんとフリート・フォクシーズが秋分の日を記念して、日本時間9月22日午後10時31分に4枚目となる最新作『SHORE』をリリースした。全てのストリーミングサイトで発表された他、バンドのウェブサイトでも発表された。こちら。
バンドは、アルバム発売日の前々日にまず「火曜日」とインスタに投稿。
アルバム発売前日となる9月21日に、正式にインスタで発表した。ティーザーはこちら。
ここに書かれているのは、
「明日協定世界時13:31に Fleetfoxes.co とストリーミングサイトの全てで、最新アルバム『SHORE』を全曲リリースする。同時に55分間のスーパー16mmで撮影された映像『SHORE』も公開する。この映像の監督をしたのは Kersti Jan Werdal。
Uwade は、この歌をこんなに美しく歌ってくれてありがとう。(*インスタ映像の歌のことを言ってる)
秋分の日の前日を祝って!」
バンドは、世界各地でポスターも貼り告知。また、素敵なアイデアだと思ったのは、今は誰も使っていないライブハウスにも告知をして、同時に選挙に行くようにと掲げていること。
●このアルバムについて現時点で分かっているのは、選挙登録をするように呼びかけたライブストリーミングで、新作の中から“Featherweight”をライブパフォーマンスしたこと。この映像の3分30秒あたりから。
このライブ映像の中に時計があるが、この時計が9:22で止まっている。ロビンがアルバムについて訊かれた時に、「ライブ映像に注目」と言ったので、ファンの間では新作は9月22日に出ると言われていた。
●先にインタビューしたバンドのギタリスト、スカイラー・シェルセットによると、フリート・フォクシーズのバンドメンバーは誰も参加していないということ。ロビン・ペックノールドが1人で作ってしまった。これについては、スカイにもう少し訊いたのだが、フリート・フォクシーズとのメンバーとはまたすぐにアルバムを作る予定だという。これから発売になるロッキング・オンでスカイラーに訊いたので、ぜひ読んでください。
https://rockinon.com/blog/nakamura/195539
ちなみに、だからと言ってロビンが全部1人で作ってしまったわけではなくて、ロビンのインスタをフォローしていて分かる範囲内では、この新作にはフリート・フォクシーズ以外のアーティスト達も参加している。
●最後に、個人的なこの作品への期待。
まず『SHORE』(=岸)というのが良いタイトルだなあということ。「岸」というのが、等身大な感じがして良い。
さらに、「岸」や、「海岸沿い」というのはフリート・フォクシーズにとっては、常にテーマのひとつだったということ。
例えば、前作の『クラック-アップ』のジャケットには、日本人アーティストの濱谷浩の作品が使われている。これは「岸」というよりは、激しい「海岸沿い」だが、大事なのは、ジャケットの右上のほうに光が差して見えること。
またロッキング・オンで2009年6月号で初めてインタビューした際にも面白いことを言っていた。彼らが西海岸シアトル出身であることが、心理的にどのように作用としているのかということ。
「西海岸には、理想主義的な観念が根強い。でも同時に、西海岸はアメリカの“終わり”にある場所だ。だから、太平洋の端に立った時に、アメリカはここで終わりだ、と実感する。目の前には果てしない海が広がるのみで、日本に辿り着くまでは、自分の目の前にあるのは、海だけだ。そういう環境は、非常に興味深い心理状態をもたらすと思うし、そういう心理状態を持つのはすごく面白いことだと思う。それに、西海岸は東海岸に比べたらまだまだ野性的な部分が残っているし。でも僕はいつかニューヨークに引っ越して、それがどう変わるのか知りたいと思う」
つまり、ロビンは海岸に立って、世界の終わりと理想の両方を見て育ってきたのだ。さらに、ロビンはその後本当にニューヨークに引っ越してきて、今この作品で「岸」に立っている。2020年、世界が正に崖っぷちに立ち、本当の「世界の終わり」かという心境を味わっている時に、彼は、その「岸」から何を観たのか?がこの作品の最大の注目点になると思う。
2020年、コロナが世界を襲い、アメリカではBLM運動が再び激化し、西海岸では山火事が起き、そして先週末にはとりわけ女性の人権のために闘ってきた最高裁の判事であるルース・ベイダー・ゲンズバーグが亡くなった。
その上に大統領選挙が迫っているという、心理的には今正に本当にこれ以上ないくらいどん底で、「世界の終わり」かと思える場所に追いつめられている。このアルバムは我々の魂を果たして救ってくれるのか?
彼が今なぜこういう発売の仕方をしたのかも含め、期待を最大限にして待ちたい。
ちなみに、今週は、スフィアン・スティーブンスの『The Ascension』もデジタルで発表される。
世紀末的な沈鬱ムードの中で、盆と正月がまさに一緒にきてしまったような複雑な気分だ。