ストーン・ローゼズ、22年ぶりの新曲“All For One”最速レヴュー!

ストーン・ローゼズ、22年ぶりの新曲“All For One”最速レヴュー!

本当に、聴くことができてしまった。ザ・ストーン・ローゼズの22年ぶりの新曲、“All For One”。
同ナンバーは現地時間の12日19時にBBCレディオ1で初解禁、そしてバンドの事前の予告ツイートどおり20時に正式公開された。日本のiTunesへの反映は少々遅れたがその後無事に配信、YouTubeにも既に公式音源がアップされている。


それにしても時間をかけたものだ。2011年の再結成から5年、ジョンが「新曲を書いている」と証言したのが2013年だから、それからもさらに3年が経っている。でもだからこそ信頼に足ると言うか、“All For One”が2016年に鳴らされるべきリアルな音になっているのも事実だ。

ブラー、スウェード、そしてリバティーンズと、再結成アルバムを成功させた近年のUKバンドたちもまた、揃ってバンドの再結成から新曲のレコーディングに至るまでかなりの時間をかけている。再結成ツアーで稼ぐためのエクスキューズとして、おざなりに出される新作では意味がない。そこには必然が、熱意が、そして今なお枯れない想像欲求があるのか、自分たちを厳しくジャッジした結果としてゴー・サインが出た新音源だからこそ、それらは最高のものになったのだ。

ローゼズの22年ぶりの新曲への取り組みも、まさにそういうアティチュードに則ったものだったはずだ。バンドの最初期からのアイコンである「レモン」を使った宣伝活動、しかもストリート・ジャックという手法がいかにもローゼズぽいと言うか、原点から再び始めようとするDIYスピリッツを感じさせるものだったし、「ファンの皆が求めていたローゼズであり、同時にファンの皆が未だ聴いたことがないローゼズでもある」この“All For One”の絶妙なバランスは、自分たちの過去をリスペクトしつつも前を向いた彼らにしかなしえなかったものだからだ。

中期ビートルズを彷彿させるサイケデリック・ギター、たっぷり取られたリヴァーヴの中で小刻みに跳ね回るレニのドラム、そしてソロ期のそれと比べても驚くほど若々しくタイムレスに聞こえるイアンのヴォーカル、それらが目一杯フィーチャーされたAメロやコーラスは、まさに“ウォーターフォールl”や“サリー・シナモン”の再来だが、一方で後半のドラッギーはヘヴィ・グルーヴのモダンな采配はかつての彼らにはなかったものだ。

今回のプロデューサーがポール・エプワースだというのも大きい要素だろう。ジョン・レッキーのそれとは違い、ほぼ神格化されている『ストーン・ローゼズ』のサウンド・エレメンツを、彼はある意味クールに解析できる人物だからだ。結果として、若く、蒼く、きらきらと眩しくフラジャイルだったファースト期のサイケデリックとはかなり異なる地点への着地を目指して、力強い確信の音がバシバシと飛んでくる。やっぱりこれは“フールズ・ゴールド”を、“ワン・ラヴ”を、そしてもちろん『セカンド・カミング』を、22年の歳月をくぐってきたからこその音だ。あくまでもレザレクションであり、リヴァイヴァルではないのだ。

にしても「All for one, one for all. If we all join hands we’ll make a wall」だと? なんだこの超絶ポジティヴなリリックは! それはユース・ジェネレーションの結束を促した80年代末のレイヴ・スピリットの復活とも取れるし、もっと素直に今の彼らの、再び真の意味で4人となった彼らの胸を張っての高らかな宣言とも取れる。
実際、「心をひとつにする」と、こんなにも大きな効果をバンドにもたらすということを証明したのが“All For One”でもある。こればっかりは『セカンド・カミング』の頃の彼らには絶対にありえなかったものだ。だって、『セカンド・カミング』のツェッペリンばりにグルーヴ滑走してたジョンのギターは非常に格好よかったけれど、同時にすごく孤独だった。でも、この曲の後半で炸裂するジョンのギター・ソロは、4人のスクラムの中で鳴っている。まさに皆はひとりのために、ひとりは皆のためにだ。ともすると冗長になりがちなジョンのヘヴィ・グルーヴ・ギターがここでは驚くほど簡潔に聞こえるのは、全員がそれを認め、リスペクトし、自分たちのものとして共有・昇華しているからこそだろう。

『ストーン・ローゼズ』はあまりにも特別な、二度と同じ輝きは手に入れることができない永遠の一瞬のようなアルバムだった。それは5年も試行錯誤した末に『セカンド・カミング』を作った彼らが一番よく分かっているはずだ。だから今、再び歩き出した彼らの目的地はあくまでも未来であるべきだし、彼らがそういうアルバムを作ってくれることを信じている。
そう、ここまでくれば間違いなくアルバムも遠からず聴くことができるはずだ。2016年のストーン・ローゼズを、『ストーン・ローゼズ』以来久々に「4人でひとつ」になった彼らのサード・カミングを期待。頼むぞローゼズ!!あと来日のリスケジュールもぜひ!!(粉川しの)
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