Hi-STANDARD全ディスクレビュー 2ndシングル『Love Is A Battlefield』(2000/4/5)
2016.10.22 18:00
『MAKING THE ROAD』後初の音源、しかも「AIR JAM 2000」開催目前! ということで肩に力入りまくった僕らリスナーの渇望感を軽やかにかわすようにハイスタは、1分強のショートチューン“This Is Love”“Catch A Wave”、そして“はじめてのチュウ”の英語バージョン=“My First Kiss”やプレスリー“Can't Help Falling In Love”といったカバー曲含む4曲を8分あまりで駆け抜けてみせた。
4曲中2曲がカバーという構成は、ザ・フーのカバーを表題曲に持ってきた1stシングル『THE KIDS ARE ALRIGHT』にも通じるマインドを感じさせたし、アルバム『MAKING THE ROAD』を機に独立した後もハイスタは変わらず我が道を行くという表明にも思えた。
だが、その軽やかさの中に、それこそビーチ・ボーイズで言うところの『ペット・サウンズ』のような――過熱する状況の高揚感の中にいるにもかかわらず、いやむしろその高揚感そのものに苛まれていくような、不穏な気配を感じてもいた。
今思えばそれは単に“Catch A Wave”イントロの、60年代ポップス感ばりばりのコーラスからの連想に過ぎなかったのかもしれないが、いずれにしても僕は今作をただの「ラブソング縛りのシングル」と受け取れずにいたのは確かだ。
《I didn't know/that the glory also calls for sacrifice/With the pleasure comes the pain/Now I know/It's the cost of my freedom》(“The Cost Of My Freedom”)
「AIR JAM 2000」を最後にハイスタが活動を休止してから3年半、Ken Yokoyama名義での1stアルバム表題曲“The Cost Of My Freedom”で横山はこう歌っている。「知らなかったんだ/栄光を手に入れるには 犠牲を払うなんて/喜びとともに 苦痛も手に入れるなんて/今はそれが分かるんだ/自由のために払った犠牲」……PIZZA OF DEATH独立後にレーベル運営を担った彼の苦闘が、赤裸々な歌詞に色濃く滲んでいる。
『Love Is A Battlefield』を通してのポップな軽やかさは逆に、バンドへの期待度の高さと自分たちを取り巻く環境の重さとに呑み込まれないために施した、懸命のセルフメディケーションだったのかもしれない。
ちなみに。PIZZA OF DEATH独立後、同レーベルのCD作品にはトイズ時代とは異なる「PZCA」の品番が振り分けられている。「PZCA-1」は『MAKING THE ROAD』、今作『Love Is A Battlefield』が「PZCA-2」。その後、数多のPIZZA OF DEATH所属アーティストの作品を通してリレーされたこの品番のバトンは今年、「PZCA-79」――つまり、ハイスタにとって16年ぶりのシングル『ANOTHER STARTING LINE』へとつながっていくのである。(高橋智樹)