ザ・ヴェルベット・アンダーグラウンド――ロックの最暗部にダイブし、絶対零度のフォーミュラを刻みつけた衝撃1stのトリビュートALが、至高の顔触れで実現。もう絶句するしかない!

ザ・ヴェルベット・アンダーグラウンド――ロックの最暗部にダイブし、絶対零度のフォーミュラを刻みつけた衝撃1stのトリビュートALが、至高の顔触れで実現。もう絶句するしかない! - rockin'on 2021年10月号rockin'on 2021年10月号

ザ・ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのトリビュート作『I’ll Be Your Mirror : A Tribute to The Velvet Underground & Nico』の9月24日リリースが決まった。イギー・ポップ、 マイケル・スタイプ、サーストン・ムーアセイント・ヴィンセントコートニー・バーネットなど、そこに新世代のフォンテインズD.C.らが加わって非の打ち所がない完璧な布陣だ。

というのも本作の仕掛人はルー・リードの親友であり、後期の傑作『エクスタシー』や『ザ・レイヴン』などをプロデュースしたハル・ウィルナーなのだ。この人はトリビュート盤の名手として定評があり、ニーノ・ロータ、セロニアス・モンク、クルト・ワイル、チャールズ・ミンガスといった巨匠たちのトリビュートを大胆な趣向で歴史的傑作に仕上げてきた。そんなウィルナーが「ルーのメイン・キュレーター」としての誇りをかけ心血を注いだのだから、それだけでもう納得だ(これが彼の遺作となってしまった。合掌)。

ロックの最暗部=現代社会との軋轢で歪められた心の深淵をクールに渉猟し、表現者として絶対零度のフォーミュラを極めたヴェルヴェッツ。そこには、ロックンロールとポップ・ミュージック全般に精通したルー・リード、そして実験音楽やノイズ・ミュージックの鬼才ジョン・ケイルという両極のアイコンがいた。単にエッジーで暗いだけではなく、呆れるほど豊饒な音楽ポテンシャルを内包していたのだ。

だから本作も、イギーやサーストン(feat.ボビー・ギレスピー!)、フォンテインズなどダークなグルーヴをがっつり掘り下げたナンバーがあるかと思えば、アニー様やアンドリュー・バードは持ち前のエクスペリメンタル性を全開させつつ超然と優雅なサウンドスケープを描出する。M・スタイプやC・バーネットやカート・ヴァイルは、自らのキャラを伸び伸び解放しながら原曲を昇華する。誰もが心からヴェルヴェッツをリスペクトしつつ、貪欲に自らの音楽探求に勤しんでいるのだ。

カートの“Run Run Run”に始まり、マット・バー二ンガー、C・バーネット、シャロン・ヴァン・エッテンなど続々配信リリースされているので、まずはご視聴を。さらに、今年のカンヌ出品作であるドキュメンタリー映画『The Velvet Underground』が10月15日公開決定という朗報もあり、この秋は間違いなくヴェルヴェッツ再発見の季節となるだろう。 (茂木信介)



ザ・ヴェルベット・アンダーグラウンドの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』10月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。

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