米英などメディア87媒体の2022年ベストアルバムを集計した結果をalbumoftheyear.orgが公開している。12月18日現在は、1位がビヨンセ、2位がロザリア、3位がウェット・レッグだ。全部女性アーティストというのも最高だし、アフリカ系アメリカ人、ラテン系、そしてイギリスの島出身新人2人組というのが、これぞ2022年を総括!と思ったが皆さんのリストと比べてどうでしたか?
まず特筆すべきは、ここ数年は決定的な1位作がなかったが、久しぶりに、主要メディア、例えば、NYタイムズ、ローリング・ストーン、ピッチフォークなどが揃ってビヨンセを1位に選んでいたこと。理由はいくつもあったが、大事だったのは、この作品はダンスミュージックだが、ここ数年の流行だったレトロなダンス作とは一線を画すものであるということ。ダンス、ブラックミュージックの歴史、LGBTQカルチャーをより深く洗練された層で表現していたから。
さらに『レモネード』のような金字塔の後で、ビヨンセが完璧でないことを恐れない開放的な作品を作ったこと。何よりDJがいるかのように“アルバム”として聴き続けられる“アルバム”として評価すべき作品であること。また、この暗い時代に人々をダンスフロアに連れ出してくれたことなどだ。
2位のロザリアは、ある意味ビヨンセの「歴史」と相反する、未来のポップサウンドを前作からさらに妥協なく追求したことが絶賛の理由だ。
そして世界が一瞬で恋に落ちたウェット・レッグは、女性に敬意を払えない男性のダメっぷりを賢く笑える歌詞とキャッチーなロックリフと白けたMVのその全てで表現し、それがあまりに今的で痛快でポップで誰もが魅了されたのだ。
興味深いのはケンドリック・ラマーの新作。発売時から絶賛するメディアがほとんどなかったし、上記の3媒体も10位以内に入れてない。その理由は長い討論を繰り広げるに値するが、簡単に言うと5年も待ったのに期待した傑作じゃなかったから。ケンドリックだからこその厳しい批判にしてそれでも4位!
その他、各国を代表するかのようにインディ作が並ぶのは、シーンの本格的な復活を物語るようだし、最大の売り上げを記録したラテンの大スター、バッド・バニーが9位なのも2022年的だ。何より様々なジャンル、世代からずば抜けた作品が出たことを象徴するこのリストは音楽シーンの蘇生を物語るようで希望が持てる。 (中村明美)
2022年ベストアルバムリストの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』2月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。
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