80年代のプリンス秘話を、元バンド・メンバー=リサ・コールマンが明かしてくれた!インタビュー時の裏話を特別にご紹介

80年代のプリンス秘話を、元バンド・メンバー=リサ・コールマンが明かしてくれた!インタビュー時の裏話を特別にご紹介

9月にリリースされたプリンスの未発表音源集『ピアノ&ア・マクロフォン 1983』。1983年当時に懐にあった曲の数々をピアノの即興演奏で披露してくれる、どこまでもプライべートな息遣いを感じさせてくれる素晴らしい内容になっていた。

『ロッキング・オン』10月号では83年当時のプリンスのバンド、ザ・レヴォリューションのキーボードとして活躍していたリサ・コールマンにこの音源について語ってもらうインタビューを掲載したが、実はこの取材でリサはレヴォリューションというバンドと、そのバンドが解散に追い込まれていった状況もよく語ってくれていた。

とても貴重な記録ともなっていたと思うので、多少『ロッキング・オン』掲載分との重複もあるが、その主な内容を紹介したい。(高見展)



●『パープル・レイン』が社会現象的な人気となった後に、バンドの状態とか、グループ内のダイナミズムとかに変化はあったのでしょうか。

「うん、確実にあったけど、実際に何かが変わったのは『アラウンド・ザ・ワールド・イン・ア・デイ』の後だったと思う。あのアルバムからの反動が妙な感じで。あれはすごく彩り豊かでサイケな作品だったけど、それに対してプリンスはものすごくモノクロな方向を取ったのね。すごくパキッとして、まさに『パレード』がそういうモノクロな世界だったわけ。バンドがさらにものすごく拡大されたわけね。

ホーン・セクションとかパーカッションも加わって、シーラ(・E)の一派がそのまま乗り込んでくるようなこともあって。なんかグループの雰囲気ががらっと変わっちゃったの。それまでの少人数のバンドとして世の中と対決するっていう感じじゃなくなっちゃって。もっと間口の広がったバンドになって、なんか違うものになっちゃったのね。で、それだけ大所帯にしちゃった後で、プリンスもまた、自分の原点にちょっと戻ろうかなって考え始めたんじゃないかと思うわ」

●その変化がバンド内で反感や対立を生んだと思いますか。

「最初はそうでもなかったんだけど、だんだんとそういうことになった。それまでのようにプリンスが自分たちに関心を払ってくれなくなって、それがすごく妙な感じだったの。『これってどういうことなの? あのプリンスはどこへ行っちゃったの? わたしたちはなにを求められてるんだろう?』って疑問が止まらなくなっちゃって。それでぎごちなくなってきたんだけど、要するにわたしたちとしては、なんかすごく怖くなってたのね(笑)」



●ザ・レヴォリューションについてはプリンスもバンドからの提案やインプットを許容したとよく言われるんですけど、それも『アラウンド・ザ・ワールド・イン・ア・デイ』までのことだったということですか。

「うん。わたしたちはかなり貢献もしてたし、バンドはいつも作業になんかしら関わっていて、特に『アラウンド・ザ・ワールド~』ではバンドが大きく関わって、ウェンディ(・メルヴォイン)とわたしや、あるいはわたしの弟のデイヴィッドとでプリンスに影響をもたらすことができたのね。

デイヴィッドはいろんな楽器が弾けて、自分にできないことをやれるやつがいるってことで、すごくプリンスも興味を持ったのね。だからある意味で、プリンスが他人からの影響を受け入れたのはあの頃が一番だったと思う。で、そのことがあのアルバムの性格を決定づけたんだと思う」

●するとその後の『パレード』関連のプロジェクトで、空気がすっかり変わってしまった感じだったんですか。

「うん。それと、この時期もまたすごく制作に時間がかかって、それは映画『アンダー・ザ・チェリー・ムーン』も同時に製作していたからなのね。移動も多かったし、フランスとか世界各地を転々としながらこのプロジェクトに取り組んでて、ものすごく時間と労力をかけているのに常になにもよくわからない状態で。映画と音楽がどれだけうまく釣り合ってるのかとか。つまり、タイトルそのものが『パレード/アンダー・ザ・チェリー・ムーン』っていうものだったから、なんていうか、まだ追っ駆けているものが漠然としているという感じがしたのね。

だから、バンドとしてはなんか締まらない感じがずっとあって。しかも、この時初めて弁護士とかに契約書を書かされたりとか、なんかそういうところがすっかり変わって、すごくビジネスライクになってしまったっていうか。だから、そういう状況下でわたしたちの場合、そこでサバイブできなかったっていうことなのね」



●あなたの場合、あのバンドでの在籍暦は長かったからなおさらその変化は堪えたでしょうね。

「うん、それにわたしたちもほんとにただの子供だったから。だって、まだ19とかだったんだから(笑)(リサは19歳の時、80年の『ダーティ・マインド』からプリンスのバンドに加入した)」

●やっぱり、そのパレード・ツアーでバンドの終りが見えた感じでしたか。

「それが、わたしにはそう思えなかったのよ。すごく楽観的に構えてたし、そういう終りを見たくなかったということもあったし。でも、バンドのみんなは落ち着きがなくなってて、どうなるかわからないし、なんか変な感じだよって言ってて。そんなことは絶対にありえないってわたしは言ってたのね。だから、あの横浜スタジアムで、わたしたちの最後のライブでプリンスはギターを全部叩き壊しちゃったんだけど、あれはバンドへのものすごいメッセージだったのね。もうこれを続けるつもりはないんだよっていうね。その瞬間が、プリンスはバンドを終わらせるつもりなんだってわかった時だったのね。すべてがものすごくドラマティックだったから、映画にしたらものすごく面白いんじゃないかと思うんだけど(笑)」

●ちなみに実はぼく、あのライブを観に行っていたんです。

「ええ、そうなの?」

●はい、まだ学生だったんですけど。本誌の編集長もその場にいたんですよ。

「えー、それはすごい」

●だけど、ぼくなんかはほんとになにが起きてるのかよくわからないっていうか。だって、プリンスって{alink id="1354"}ピート・タウンゼント{/alink}的なキャラクターではなかったじゃないですか。

「(笑)確かに」

●だから、ものすごく異様な感じで。もちろん、あの時点ではどういうことだったのか、さっぱりわからなかったし、その後、レヴォリューションが解散したことを知ったわけなんですけど。ただ、あの時のライブはもう圧倒的な内容だったから、ものすごく強烈な思い出として残っているんです。

「そのコメントは聞かせてくれてありがとう。やっぱりあれ以来、あの時のコンサートがよかったのかどうかずっとわからないままだったから。だから、あの時のお客さんがどう思っていたのか、それがずっとわたしには気になっていたの。

だって、プリンスが目の前でギターを叩き壊しているわけだし。普段は絶対にそういうことはしない人だったのよ。だから、本当にありえないことが目の前で起こり始めていたわけで、それは本当に打ちのめされるような衝撃だった」


●その後、プリンスとあなたとウェンディとでやり残した楽曲について取り組んだものの、頓挫したプロジェクトがあったと聞いていますが、これって実際にやっていたんですか。

「うん、それは事実なの。プリンスからいくつか楽曲が送られてきて取り組んでたんだけど、結局、ほかのアーティストの作品に使われることになっちゃって。それはそれで別にしようがないことだし、一部の曲はそうなっちゃったということで。ただ、ほかの曲についてはわたしにはもうわからないというか。本当に、この先どうしたいのか、よく読めない人だったから(笑)。ある日、なんか思いついても、次の日にはもう別なことが閃いているような人だったから。

だから、連絡はずっと取り合っていたんだけど、なにをしたいのか、どう考えているのかはなかなか摑みづらい人だったのね。だけど、なんかやろうよという話はいつもしてたのよ。もっと一緒に曲を書いてみようとか。折に触れて会ってたし、そういう時はいつも本当に楽しかったから。そうやって会ってみるとやっぱりすごく特別な感じなのね。

なんかそのうち、そういうチャンスが実現すればって願ってたんだけど。だから、わたしは今がそういうチャンスだと思ってて、プリンスがどれだけすごい人だったかということ、自分がどれだけすごい時間を過ごしたか、一生に一度の経験だったということを伝えられればいいなと思うのね。それをこうやって伝えて、一生に一度の体験の二度目が来ているわけなの」

●では、機会をみつけてはプリンスと会っていたんですね。

「うん、まあ、よくLAに来てたから。ウェンディとわたしはLAにスタジオを持ってるし、折に触れてプリンスはわざわざそこで作業をしたりしてたし(笑)、思い出したかのようにウェンディとわたしを食事に誘い出してくることもあったから。だから、連絡はずっと取り合ってたのね。というわけで、普通にずっと付き合いは続いてたのよ」



『ピアノ&ア・マイクロフォン 1983』の詳細は以下。


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リサ・コールマンのインタビュー記事は現在発売中の『ロッキング・オン』10月号に掲載中です。
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