前回の来日が2015年、今回はAOR/ヨット・ロックの人気もあってか、ちょいと華やかな感じがするなか『ミドル・マン』の“JoJo”で幕を開け、“It's Over”で客席を暖めたボズ・スキャッグスのライブ前半は、最新作『アウト・オブ・ザ・ブルース』から4曲立て続けに演奏される。自身のルーツであるR&Bやブルースに立ち向かった曲は、派手さはないが、じっくりと染み込んでくるがとくに<マイ・ヒーロー>として紹介されたボビー・“ブルー”・ブランドの“The Feeling Is Gone”に聴き惚れる。
ブルージーな歌声に酔いしれたところで必殺“Harbor Lights”、“Georgia”の『シルク・ディグリーズ』ナンバーで、客席の<来て良かった値>はマックス。そのまま名曲“Lowdown”、“Lido Shuffle”で本編終了。名うての腕利き揃いのバンドもさすがで“Lowdown”のウィリー・ウィークス(B)のプレイにはしびれたが、終始ギターを手にしたボズによる的確なプレイもライブならでは。
その頂点はアンコールの“Somebody Loan Me a Dime”で、デュアン・オールマンと共にブルーズの名曲を極上のものに仕上げた世界を10分以上にわたって聴かせ、“We're All Alone”へとつながる流れはどんなタイプのファンも満足させたし、最後はチャック・ベリーの“You Never Can Tell”で締めくくる完璧っぷり。これぞベテランとしか言い様のない熟成した歌声とサウンドに酔いしれた。(大鷹俊一)