ELLEGARDEN、大切な昨日と遥かな明日を繋ぐ、嘘偽りない「今」。『The End of Yesterday』ロングレビュー

ELLEGARDEN『The End of Yesterday』
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ALBUM
ELLEGARDEN The End of Yesterday
“Mountain Top”“Strawberry Margarita”といった先行配信曲がリリースされていたとはいえ、未だ夢見心地である感覚は否めない。なんたって16年ぶりである。でも、その夢を覚ましてくれるような全11曲が、今作には詰まっている。さらに、タイトルは『The End of Yesterday』なんだから――かつてないほど雄弁ではないだろうか。これは、アルバムのラストに収められている“Goodbye Los Angeles”の《さらば太陽の街/僕がまた昨日の終わりに戻ってくるまで/昨日の終わりに(和訳)》という一節にも出てくる言葉。昨日が終わって、ようやく、ここからまたはじまるのだ。

その“Goodbye Los Angeles”は、まさにタイトルからもイメージできると思うけれど、ロサンゼルスで今作が生まれたことを綴った日記のようなナンバー。そんなふうに今作には、2022年のELLEGARDENが、あまりにもピュアにパッケージされている。

歌詞は、細美武士が今、何を考えているのか、そして、ELLEGARDENの今のモードとは?という、彼らの「今」が、どの楽曲からも見えてくる。弱さや迷いも覗くけれど、休止前のELLEGARDENの歌詞と比べると、とても強く感じられる。もしかして、そこにちょっぴりさみしさを覚えるファンもいるのかもしれない。でも、これが紛れもなく、今のELLEGARDENだ。そして、あの頃も今も、噓偽りなく自分たちをさらけ出すというところにおいては、彼らは1mmも変わっちゃいない。

また曲も、休止前と比べると、大きな変化が見られる。ひとつは、2ビートの楽曲がない、というところ。大人になったのか?と言われれば、まさしくそうなのだと思う。だって、ELLEGARDENの4人や、聴いている私やあなただって、紛れもなく16年の年月を経ているわけだから。そう考えると、過去を形だけ模倣することがELLEGARDENを貫くということではない、ということがわかるだろう。歌詞と同じように、噓偽りなく自分たちをさらけ出すという意味において、彼らはELLEGARDENを貫いたのだ。実際、休止前も、彼らはアルバムごとに作風が変わっていた。これを機会に聴き直してみるのも、面白いと思う。そして、大人になってはいるけれど、大人しくはなっていないところもポイントだ。

もうひとつ、大きな変化として挙げられるのが音質。歌も演奏も、紛れもなく4人の顔が見えるものなのだけれど、明らかにアップデートされている。今、海外でポップパンクが再び浮上してきている中で、それらと並べても大きな輝きを放つような、さらに言えば、サブスクで聴いても、どんなメディアで聴いても、クオリティがわかる仕上がりになっているのだ。これも、噓偽りなく今を反映させた結果なのだと思う。それでいて、必要以上に時代に迎合したようには聴こえないところが興味深い。ELLEGARDENの楽曲や演奏に、信念という揺るがない根っこが生えているからなのだろう。その尋常じゃないたくましさが、今作のトライアルによって際立っている。

すでに配信されている2曲以外を見ていくと、平熱のまま疾走するビートの中で、一言一言噛みしめるような歌詞が響く“Breathing”。アコースティックギターと日本語詞の歌からはじまり、切なく燃え盛るようなサビに向かう“ダークファンタジー”。軽やかにはじまったかと思ったら、ずっしりしたサビへと向かう、リズムも含めて展開に引き込まれる“Bonnie and Clyde”。情景が目に浮かび、五感が刺激されるような日本語詞が、伸びやかなメロディで飛び込んでくる“瓶に入れた手紙”。ヘヴィでありながら小気味いい、ライブが楽しみになる“Firestarter Song”。すぐに心と体が踊りだし、《ティダ・ラ・バダ/We get it get it go》と口ずさんでしまう、元キッズも笑顔になりそうな“チーズケーキ・ファクトリー”。これもライブで聴くのが楽しみな、歌詞も含めてあちこちに、心に火をつけるフレーズがちりばめられている“10am”。ELLEGARDEN史上初の4つ打ちという変化球でありながら、ポップなメロディと染み入る歌詞で、2022年のELLEGARDENを象徴する楽曲といえる立ち位置に登っていきそうな“Perfect Summer”。そして、“Goodbye Los Angeles”で今作は終幕となる。

そうそう、もうひとつ今作ならではの特徴を挙げると、一人ひとりの音から、音楽をやる楽しさ、ELLEGARDENをやる楽しさが聴こえてくるところ。4人の音がバチバチぶつかり合って火花を出す、というよりは、がっぷり組み合ってグルーヴを生み出しているのだ。だからこそ、“Perfect Summer”を筆頭に、難解なリズムを乗りこなし、聴き手には心地よい形で届けることができているのだと思う。こんなふうにELLEGARDENの「昨日の終わり」と、「明日へのはじまり」が見られるとは……と思うと、感慨深いものがある。

彼らと僕ら、さらにロックバンドと時代をも明日へといざなう、記念すべきアルバムの誕生だ。(高橋美穂)

(『ROCKIN'ON JAPAN』2023年2月号より)


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