おいしくるメロンパン/オンラインライブ「配信 邁進 カプサイシン、売り込み熱心 母感心。」

おいしくるメロンパン/オンラインライブ「配信 邁進 カプサイシン、売り込み熱心 母感心。」
今年2月にアコースティックワンマンライブを行って以降、予定していたライブはすべて延期/中止となってしまい、足を運ぶ予定だったファンはもちろん、本人たちも歯がゆい思いをしてきたことだろう。全国を回るはずだったワンマンツアーも全公演が中止となってしまったが、4月には“透明造花”が、そしてつい先日9月16日には最新曲“架空船”の配信リリースがあり、新機軸とも言える思い切り攻めたアプローチのバンドサウンドは、ライブ演奏でも早く聴いてみたいと思わせるものだった。ということもあり、今回おいしくるメロンパンが配信ライブを行うというニュースを耳にして、これは良いタイミングだと思った。

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この日の配信ライブは、ライブハウスのステージではなく、フロアに3人が向き合うようにして機材がセッティングされていた。メンバーたちにとっても久しぶりのワンマンライブだ。開演前、静かにそのセットだけを映す映像が流れると、画面越しに観ているこちらもなぜだか緊張してくる。おなじみのSEが流れメンバーがゆっくりと登場。ナカシマ(Vo・G)のギターカッティングから“epilogue”でライブはスタート。昨年リリースしたミニアルバム『flask』の1曲目に収録された楽曲。終わりを意味するこの楽曲からスタートするのが彼ららしいが、このコロナ禍で宙ぶらりんになった夏を終わらせるために鳴らすかのようにも響いて胸に沁みる。そして“look at the sea”のアウトロからエキセントリックなイントロへとシームレスにつながる“命日”の流れは圧巻で、ぐいぐいとアンサンブルはドライブしていった。無観客でのライブ、そして3人が向き合う形での演奏ということで、序盤から通常のライブとは違った趣を見せる。もちろん画面越しに観る視聴者のことを意識していないわけはないのだが、その演奏は、それぞれがそれぞれの音に没入しながら、その場で立ち現れる音像を新たに発見するかのように、いつもとは違ったエクスペリメンタルなムードが漂っていた。曲間のつなぎもとても新鮮に響く。

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峯岸翔雪(B)はいつものように「自由に楽しんでいってください」と呼びかけた。ミニマルなアンサンブルが心地好い“caramel city”のミドルテンポの音像が、より切実で性急な“泡と魔女”へと続く流れは、音楽が物語と風景を連れてくるという、おいしくるメロンパンの本質を、しっかりと表現していた。“dry flower”から“紫陽花”へと続く流れもそうだ。3rdミニアルバム『hameln』に収録された“dry flower”の源泉には、2016年の1stミニアルバム『thirsty』に入っている“紫陽花”があることをはっきりと感じられる流れだったのだが、改めて、今のこの3人が演奏する“紫陽花”のアンサンブルは格別なものがあると思った。どこかへ連れていかれるようなスリリングなスピード感のなかで、3人の音がぶつかり合うのを避けるのではなく、ぶつかってくる音をそれぞれが受け止めながらアウトプットしていくかのような、そんな面白さが感じられた。楽曲のエンディングの決めが、そのまま“シュガーサーフ”のイントロに重なる瞬間にも心が沸き立った。そのタイム感を楽しむ3人のアイコンタクトの様子をしっかり捉えたカメラワークも相まって、3ピースバンドの真骨頂を見た気がする。

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おいしくるメロンパンが持つポストロック的なアプローチや、リズムや展開がひときわユニークで遊び心に溢れた楽曲たちを、ひとりの部屋でじっくりと堪能することができたのも配信ライブならではだ。“水葬”のリバーブがかったドローンなベース音で水底に沈んでいくような感覚や、もがくように歪むノイジーなギター音が風景を切り裂くように鳴る瞬間は、バンドとしての表現力の圧倒的な向上を感じさせた。“candle tower”にしても、前回のツアーで感じた以上の激情が渦を巻いていた。ナカシマのエモーショナルな歌声も、演奏への没入感があってこそだろう。疾走感のあるドラムとベースが鳴り始めると、ラストに披露されたのは最新曲“架空船”。初めてのライブ披露だ。同じフレーズの繰り返しのなかで浮かび上がってくる高揚感、ナカシマのポエトリーリーディング。その声と同等の存在感でベースもドラムもギターも鳴る、躊躇のないラウド感。これはおいしくるメロンパンとして、これまでとは違ったアプローチで攻め込んだ楽曲である。ライブ演奏では、よりその「攻め」の姿勢を受け取った。今これが3人だけの音で実現できていることに改めて驚く。駆け抜けるように演奏を終えると、一言「ありがとうございました」と告げて去っていく3人。不思議な余韻を残して。

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終演後には、「5 years HISTORY」と題された映像が流れた。バンドの5年間の歩みが、貴重な写真や映像でまとめられていて、じっくり観たいのだけれど、そのバックで流れているのが“蜂蜜”で、しかもリードボーカルを原駿太郎(Dr)や峯岸がとったり、原のラップが挟み込まれたり、聴きどころ、観どころが多すぎ(笑)。今回の配信ライブは10月3日(土)23:59までアーカイブ視聴が可能なので、リアルタイムでの配信を見逃した人も、おいしくるメロンパンの最新モードを確認するためにも、ぜひ、観ておくことをおすすめします。この5周年の記念映像もぜひ。

そしてその映像の後には「特報」が。なんと、来年1月31日(日)から全国17ヶ所を巡るワンマンツアーを行うことが発表された。ツアーファイナルは東京、Zepp DiverCity (TOKYO)。バンド史上最大規模のキャパシティを更新することになる。今回の配信ライブを観たあとでは余計に、フルサイズでのライブを体感したくなるというものだ。これはぜひとも楽しみに待とう。(杉浦美恵)

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