【ロッキング・オンを読む】最後のツアーを目撃する準備は完了したか? キッスの来日公演に寄せて【一部公開】

【ロッキング・オンを読む】最後のツアーを目撃する準備は完了したか? キッスの来日公演に寄せて【一部公開】

ツアー・バンドとしては、威厳を保ったまま、ステージから降りるべきだということなんだよ。まだチャンピオンのうちにね


ロックに非日常性を持ち込んだバンドの先駆者がキッスである。しかし、その非日常性の精神こそが、ロックという音楽の根底に流れるエンターテインメントの側面を強烈な形で浮き彫りにしていった。その独創的なキッスの手法を、幼稚であるとか、ギミックだと断罪し、攻撃した連中の多くは、既にシーンから退場してしまった。リングに残ったのはこのキッスである。つまり、彼らは勝者に他ならないのだ。

1970年代に“3大バンド”と呼ばれたクイーン、キッス、そして、エアロスミスは、ロックという音楽の個性の振り幅の大きさを知らしめ、共に異なる孤高性を確立させたことでも知られている。とりわけキッスというバンドが表現した、革新性、斬新さは、他のバンドとは一線を画する、いわば、邪道と言えば邪道とも思える手法だった。しかし、逆に言えば、ロックとは雑食性をエネルギーにしている音楽であり、何でもありだからこそ面白いのだと、キッスは教えてくれたのである。

だが、キッスと同じような手法を駆使するバンドはついに登場しなかった。ここまで亜流を生み出さなかった伝説のバンドも珍しい。常々、思っていた。ジーン・シモンズの立ち振る舞いには、天上天下唯我独尊の誇りが感じられる。つまり、キッスの前にキッスなし、キッスの後にキッスなし。この方程式が揺るぎないことを、ジーンとポール・スタンレーは予てから確信していたに違いないのだ。予定的調和の権化とも呼ぶべきライブ・パフォーマンス。炎とパイロの祭典。そして、終わりのないロックン・ロール・オール・ナイト。キッスの進撃は、自らが作りあげてきた“王道”のど真ん中を貫いてきた。それは、昔も今も変わらない。

デビューから約45年。彼らは最後のロードに足を踏み出した。そして、日本のファンとのお別れにやってくる。これが本当の最後になるだろう。エンターテインメント性が凝縮されたキッスワールドには、夢と夢が連結した、ワクワクするような喜びがある。その全てを目撃して、キッスの威力を丸呑みしようではないか。目撃する準備は完了したか?(伊藤政則)



ジーン・シモンズのインタビューはキッスが表紙巻頭の『ロッキング・オン』9月号に掲載中です。
ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。

【ロッキング・オンを読む】最後のツアーを目撃する準備は完了したか? キッスの来日公演に寄せて【一部公開】 - 『rockin'on』2019年9月号『rockin'on』2019年9月号

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