そんなふたりの3作目となる最新作“ハルジオン”がこの5月にリリースされた。『スクロール』等で人気の作家、橋爪駿輝が『それでも、ハッピーエンド』という原作小説を書き下ろし、それをもとに完成した楽曲が“ハルジオン”だ。かつての幸福と心の痛みと再生への希望が描かれる原作小説は、その文体や構成、それ自体が音楽的でもあり、それをもとにした“ハルジオン”はどこか小説的な深みを持つ。その関係性は、映画やドラマに音楽が彩りを添えるということとは似て非なるものだと実感。小説と音楽が同時に鳴るのではなく、それぞれが描いた景色を行き来しながら、受け取り手であるリスナー自身が、その「物語」にさらに立体的な手触りや色を加えていくような新しい体験なのだ。
“ハルジオン”は、そんなYOASOBIのコンセプトが明確に理解できる楽曲。心がはやる疾走感や、沈黙の叫びなどは小説でももちろん感じられるものだが、音楽だからこその編み方で、感覚的にその「物語」が体に沁みてくるという体験はとても新鮮だ。Ayaseのソングライティングと、ikuraの静かに感情を波立たせるような歌声がそれを見事なバランスで成立させている。今後の「物語」にも期待せざるを得ない。(杉浦美恵)
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