2020年に生み落とされた衝撃のデビューアルバム『strobo』――その本質に迫る全曲レビュー
文=小池宏和
2020年の今こそ、聴かれるべき傑作ポップアルバム『strobo』。
“東京フラッシュ“、”不可幸力“など、矢継ぎ早に名曲を生み出してきた破格の新人・Vaundyが生み出した、その生涯で「初めて」のフルアルバム、そして、驚くべき多様性に満ちたこの革新の作品の魅力に、全曲解説レビューで向き合おうと思う。
前号に掲載した初のロングインタビューとあわせ、音楽シーンに颯爽と現れた超新星の「今」と、その圧倒的な才能のありように触れてもらえれば嬉しい。
1.Audio 001
間違いなく、2020年に旋風を巻き起こすことになるVaundyのデビューアルバム『strobo』は、街の雑踏やトースターの音、「ただいま」という何気ない日常の声などをカット&ペーストしたトラック“Audio 001”で幕を開ける。
生活の一瞬一瞬をまさにストロボの閃光のような鮮烈さとスピード感でフラッシュバックさせるこのトラックは、バイラルヒットとなった“東京フラッシュ”のイメージと地続きになっているのだろう。
無機質なサンプリングの連鎖の向こうには、瞬間の情景を逐一キャッチせずにはいられない感受性の豊かさ、押し寄せては通りすぎてゆく情報の虚しさ、そして絶え間なく移ろいゆく感情の儚さが感じられる。それらが、『strobo』という心象風景の基盤を成すものである。(以下、本誌記事に続く)
(『ROCKIN'ON JAPAN』2020年7月号より抜粋)
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