現在発売中の『ROCKIN'ON JAPAN』7月号にさユりが登場!変化はしたけど、変わってない部分と、変えたくない部分と、変わるつもりがない部分――それを全部引き連れて、「酸欠少女ですよ、私」って進んでいくのは気持ちいいなって
秘蔵フォトとともに振り返る、弾き語りアルバム『め』、そしてふたつの新曲に込めたもの、そのすべて
インタビュー=小栁大輔 撮影=北島明、黒瀬康之、藤原江理奈
さユりから届けられた弾き語りアルバム『め』はそのキャリアを総括するように作られている。シングル表題曲はもちろん、ライブでの人気曲、コラボ曲など、シンプルに言うなら、「ベスト」アルバムと言ってもいい。15曲。71分。細かく震え続ける声、呼吸するそれ自体が歌に昇華されていくような緊張感、この広い世界における「酸欠」状態を鋭く切り取った切迫した言葉たち。さユりはいつも、小さな全身に詰め込んだそんなすべてを曲に込め、渾身の力で歌い続けてきたが、その歩みを孤独な戦いだったとするなら、弾き語りアルバム『め』は、独りで戦ってきた季節を振り返り、どこか慈しみ、見送っていくような作品だと思う。切実な歌はここでも切実な歌のままだが、さユりの声が今伝えるものは、悲哀ややるせなさや虚しさ――言ってしまえば、生きることの「黒さ」というより、真っ白で透明な、美しい光のようだ。孤独の戦いを生き抜く中でその身に刻まれてきた傷跡のすべてを成仏させ、抱きしめるような歌。15曲目の“十億年”が終わった瞬間に手元に残る真っ白い肯定感。それがさユりがデビュー5年の歩みで手に入れた最高の力なのだと思う。
さらに、『め』に続いて発表された、春風を吹かせるポップソング“ねじこ”。澄んだファルセットで陽光溢れる日常と移ろう季節の叙情を綴った“葵橋”。ともにどこか軽やかで、穏やかな表情を浮かべたさユりを思わせる新たな楽曲である。『め』から始まる新たな実感を、これまでJAPANで撮影してきた秘蔵写真とともに語ってもらった。(小栁大輔)
(『ROCKIN'ON JAPAN』2020年7月号より抜粋)
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