現在発売中の『ROCKIN'ON JAPAN』7月号にBiSHが登場!BiSHは音楽を届け続けるし、自分たちらしさっていうのは絶対忘れずに、当たり前を裏切り続けていきたい。そこは変わらないです(セントチヒロ・チッチ)
今思うこと、その胸中を語った最新ロングインタビュー、そして、「BiSHの12曲」を解き明かす「セルフライナーノーツインタビュー」――完全おうちシューティング&秘蔵フォトとともに送る、BiSHのすべて!
インタビュー=小栁大輔/小川智宏 撮影=オノツトム
BiSH初の表紙巻頭特集である。
表紙にも書かせてもらったが、完全にリモートでの撮影をやらせてもらった。
事前に何度も打ち合わせをし(もちろんリモートで)、何度も企画の詰めをさせてもらった。インタビューの内容も、僕の頭の中には訊きたいことが山ほどあったが、それを整理し、オファーに詰め込み、リモートで撮影するにはこのような方法があって、それを実現させるには、メンバーにはセルフでヘアメイクをしてもらわないといけないし、衣装についても私服もしくは、私服に近いものを用意してほしい、それもリモートで準備をしてほしい、というような、普段であれば完全にむちゃくちゃな相談をさせてもらった。
リスクもコストも手間も時間もかかるオファーだったはずだが、BiSHのスタッフ、何よりBiSHメンバーたちは、すべての要望に対して、見事なまでに対応し、万全の準備とパフォーマンスで応えてくれた。
この全48ページの大特集は、そうやって文字通り、「総力」を挙げて作られていったものだ。まず、この場を借りて、最大の感謝を伝えたい。
今回、この時期に、上記のようなやり取りを重ねながらBiSHを聴いていて、あらためて、こみ上げてくるもの、湧き上がってくるものを感じた。表紙に登場してもらっておいて今更何を言ってるんだという話だが、ああ、BiSHというのはつまりこれなんだな、と腑に落ちるものがあった。
この長いインタビューテキストの中でも、6人それぞれが異口同音に語ってくれているが、それはいかなる苦境においても諦めない信念であり、いついかなる時でもひたすら汗をかき続ける姿勢であり、6人でスクラムを組み、フォーメーションを崩すことなく、自ら必死にユーザーを愛しにいくやり方――なんて書いてしまうと、いかにも美辞麗句にすぎないが、それでもやはり、BiSHとはそれなのだなと思わせる説得力が、6人の言葉にはあった。
松隈ケンタが書くメロディは有無を言わさずエモーショナルだ。渡辺淳之介やメンバー自身が書く言葉もまた、否応なく泣けるものである。しかし、この6人が、まったく別々の人生を生きてきた6人として、実力も経歴も、そもそものモチベーションもまったく違う、美しいほどにバラバラの6人として、しかし、唯一、「BiSHに生かされている」という実感だけを共通点とする6人として、瞬間瞬間のベストを尽くしてステージに立ち続けているその姿こそが、その楽曲を、「泣ける」ものにしているのではないか。
安易なユニゾンがほとんど登場しない、徹底的に「独り」が歌い連ねていくその楽曲は、そんなバラバラの6人が歌うからこそ、ひとりひとりの物語が生真面目に投影されたものになっているのではないか。
そして、そうして生まれた抜き差しならないエモーションこそ、やはり同じようにバラバラのままに生きているリスナーたちを、バラバラのまま救い、その心を貫いていく最大の理由なのではないか――。
そんなリスナーが今、何万人もいるのだとすれば、それは、その楽曲に普遍的な力があるということ、そして、彼女たち6人の生き方にはどこか、人生に踏み込み、強引にでも関わっていくような、決死さとひたむきさがある、ということなのだと思う。この特集を、今という時期に、この6人と一緒に作り上げることができて、本当によかったと思った。
今回のインタビューは、そんなBiSHの戦い方、傷だらけの足跡にフォーカスを当てたものだ。
代表曲・重要曲を、6人それぞれに2曲ずつ語ってもらった「セルフライナーノーツインタビュー」、そして、「まさに今、2020年5月の日本で、6人は何を思っているのか」を訊いた近況インタビューで構成させてもらった。実稼働丸3日という、雑誌の取材としてはあまり例がないであろうエネルギーを強いる取材となったが、6人は一切ブレることのない、献身的な姿勢で乗り切ってくれた。いつだって傷だらけのまま、与えられた舞台で懸命に輝こうとする6人、BiSH。そのいちばん大切な部分に触れ、少しでも読者に届けられる、そんな特集になっていたら嬉しい。(小栁大輔)
(『ROCKIN'ON JAPAN』2020年7月号より抜粋)
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