【JAPAN最新号】スピッツ、「スピッツ コンサート 2020 “猫ちぐらの夕べ”」――この夜だけに流れた時間があった。幸福の手触りを確かめた夜をレポート

【JAPAN最新号】スピッツ、「スピッツ コンサート 2020 “猫ちぐらの夕べ”」――この夜だけに流れた時間があった。幸福の手触りを確かめた夜をレポート
現在発売中の『ROCKIN'ON JAPAN』2月号にスピッツのロングルポを掲載!

この夜だけに流れた時間があった。幸福の手触りを確かめた夜――「スピッツ コンサート 2020 “猫ちぐらの夕べ”」レポート

文=天野史彬 撮影=中野敬久


いきなりだが、少しだけ思い出話を書く。

去年、というか、この記事を読む人の多くにとってはもう一昨年になるのかもしれないが、2019年の年の瀬、東京から福岡まで、スピッツのライブを観に行った。アルバム『見っけ』のリリースツアー「SPITZ JAMBOREE TOUR 2019-2020 "MIKKE"」の、マリンメッセ福岡公演のレポートを書くためである。公演は二日間あって、両方行った。その一日目、会場に向かうために乗ったタクシーの運転手さんとスピッツの話をしたのだ。福岡は草野マサムネ(Vo・G)の故郷ということもあって、街の人々にとってスピッツは馴染み深い存在のようだった。「マリンメッセ、今日は誰が出るんですか?」「スピッツですよ」なんてところから始まった会話。運転手さんは人気アイドルの名前を挙げて「ありゃあ、歌が下手でダメですね。その点、スピッツは歌がずっと上手くていいです」なんて話までしていて、可笑しかった。見たところ、なかなかご年配の運転手さんだが、続けてこんなことを言うのだ。

「スピッツといえば、“チェリー”の歌詞がいいですよね。《「愛してる」の響きだけで 強くなれる気がしたよ》って、あの《響きだけで》っていうのが、いいんですよね」

「ホント、いいっすよねえ」なんてことくらいしかその時は返せなかったけれど、このやり取りが、僕はこのうえなく嬉しかったのだ。「神は細部に宿る」なんて言うけれど、東京から単身やってきた福岡の地で、一期一会、歳の離れたおじさんと、あの歌の細部に宿る寂しさや、逞しさや、美しさを共有できたことは、本当に幸福なことだったと今でも思う。

誰だって、その人生の中で、言い知れぬ孤独につき纏われて震える、そんな夜を過ごしたことがあるだろう。あのタクシー運転手のおじさんは人生のどんな場面で、どんな人の名前や面影を胸に抱きながら、“チェリー”のあの一節を反芻してきたのだろうか。スピッツの音楽は、人間は誰しもが「ひとり」であることを思い出させるが、不思議と「ひとりぼっち」にはしない。タクシー運転手さんとの会話は、そういうことを強く感じる瞬間だった。(以下、本誌記事に続く)

(『ROCKIN'ON JAPAN』2021年2月号より抜粋)



  • 【JAPAN最新号】スピッツ、「スピッツ コンサート 2020 “猫ちぐらの夕べ”」――この夜だけに流れた時間があった。幸福の手触りを確かめた夜をレポート - 『ROCKIN'ON JAPAN』2021年2月号

    『ROCKIN'ON JAPAN』2021年2月号

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